おぼえていますか | ナノ
02




この状況、一体どう説明すればいいのだろう・・・?


スズは困惑していた。目の前にいるのは紛うことなく、うちはオビトである。彼女の知識と前世の記憶から確かだと謂える。
だが何故その彼がここにいる?


流石のスズも里内で元同期メンバーを警戒することはあるが影から見守り続けたオビトの存在は稀にオビトがスズに近づきすぎて見つかった時以外気付かなかった。その見つけた時も自責の念に駆られて生み出した幻覚だと信じて疑わなかった。本来なら持つはずのない知識が彼女の冷静な判断を鈍らせたのだ。


敵か味方か…アスマは新たに現れた仮面の男を警戒する。教え子であり、元同期でもある少女を守ったその男を手放しで歓迎できるほど彼も甘くない。
忍びの性分ともいえる。アスマの警戒態勢にスズは正体を教えれば簡単だが何故それを知っているか説明することはできないし、そもそも何故彼がここにいて自分を助けたのかは知らない。

シカマルたちは茫然と成り行きを見守っている。


様々な視線に曝されながら、オビトは仮面の下でこの状況に焦燥していた。
不甲斐ないアスマに対しての苛立ちと、予定外の再会に焦っていた。オビトの予定ではスズとの再会はもっとこう、ロマンチックな情景で感動的なものにしたかった。だが身体が先に反応したのだから仕方がない。それでも自分自身納得できない面もあった。

そんなオビトの心情をアスマが読み取れれば「あ、コイツ間違いなくオビトだ」と根拠もなく認めただろうが、生憎と彼にそんな力はない。

怪しい仮面の男、それがアスマのオビトに対する印象だ。



沈黙が場を占めたとき、最も予想外な人間がポツリと漏らした。

「もしかして……あの“仮面の男”さん?」


チョウジが言った科白に「は?」と何を言われたか分からない精神もしくは肉体的大人4人を除いて反応したのはイノだ。

「そ、そうよ!卒業したての下忍を助けてくれるっていう噂のヒーローに違いないわ!」


キラキラと純粋に輝く4つの目はオビトに向けられた。

その噂を「くだんねー」と一蹴したシカマルもそういえばと記憶のそれと照らし合わせて「まじかよ」と茫然と呟いた。

謂われた本人、オビトはオビトで「こいつら何いってんだ?」と戸惑ったがその“仮面の男”について熱く語る下忍二人の科白に「あ!」と思い当たる節があった。
暇さえあれば里に(神威で)帰省してはスズを見つめていた彼は基本スズ第一主義者だ。だが元々里の老人で自分の知らないものはいないと豪語していただけありオビトの根本はとても優しい。うちは一族では珍しい明るい性格が彼女の死で曇ったのと逆に、彼女の生を知るや否や親切心がある程度甦って来た。というより忘れていた感情を思い出した。

気まぐれに里外に出たばかりで浮かれている下忍が危なくなると、ついつい助けてしまう。助けた後で「俺は何をしているんだ」と葛藤し姿を消す。そんな男に助けられた者は口をそろえて「救いのヒーロー」と称えた。4年間でそれはアカデミーにまで広がっていたのだ。


だからミーハー二人に便乗してオビトこと仮面の男は云った。


「もう大丈夫だよ」


ヒーローの常套句を。お気楽な、トビの性格で。

だから想い人の白けた目に仮面の下で静かに泣いた。





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