05
「まさか……本当にお前が犯人なのか?」
到底信じられない。そう言いたげな表情を隠しもせずオビトに向けるイタチにオビトは内心嗤った。
(ああ、そうだよ。世界を否定した癖にスズが生きていたと解っただけで手のひらを返したんだよ)
無言は肯定だと捉えたイタチは改めて驚愕した。
自称うちはマダラ。だがイタチは彼が本物のマダラだと信じたわけではない。だがその名を名乗るだけの何かを持っていることを感じ取っていた。だからこそ、殲滅任務に彼と取引したのだ。
イタチ自身今回の騒ぎに困惑しているがそれと同時に安堵している。まだ13歳の彼が背負うには大きすぎるものを背負わずに済んだのだ。だがただ感謝するには安心できる相手ではない。なにか裏があるんじゃないかと、疑うのも当然だ。
視線でそう訴えてくるイタチにオビトはその疑問を否定した。しかし「そのかわり…」とある条件を提示した。
「何・・・?」
「今謂った通りだ。かがちスズという少女についてどんな些細なものでもいい、随時報告して欲しい。それが条件だ」
一族と里に今後手を出さない条件がたった一人のアカデミー生の情報とは如何のものか。
到底取引というにはお粗末な、明らかにこちらにメリットがありすぎるそれにイタチは警戒するがオビトは本気だ。寧ろ彼女の存在一つで世界を壊し作り替えるとまで決意していたのだから軽すぎるとも思っている。
イタチはその少女の名前を知っていた。彼の愛してやまない弟がよく口にする名前だ。
その少女は本当に唯の少女だと知る彼にしてみれば不信感を抱かせるには十分だったが、それと同時に”かがちスズ”という少女に興味を持ったのも事実。サスケに紹介されたこともあるためお互い全くの他人ではない。適当に理由をつけて接触するのも容易だ。
こうして彼はオビトの条件を承諾した。
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