おぼえていますか | ナノ
04





スズ?

スズ、スズスズスズスズスズスズスズ…………スズ!!



気が付くとオビトはスズの頬に手を当てていた。変化しているため手袋を外したそれから伝わる熱が、指先から広がっていく。

(生きている・・・スズが、生きている)


オビトは冷水を浴びた様に冷たくなった身体を温める彼女の温度の心地よさに涙が出そうになった。今日は仮面をしていないというのに。

老人の突然の行動にきょとん、としたスズだったがその手に自分の手を重ねて「どうしたんですか?」と聞く。

ゆっくり目尻を下げ、丁度彼女に似合いそうだと店に入った瞬間見つけたシンプルなネックレスを手に取り、誤魔化す様に「これにする」と返した。


会計を澄まして店を後にする。
それじゃあと手を振る彼女の名前を久しぶりに口にした。


「え・・・っ?」


スズが吃驚したのはその聲色がオビト自身も予期せぬくらい柔らかく優しいものだったからかもしれない。
頬に添えられていたスズの手を包み込む形で掴み、会計の後も握っていたので離すときにその手の中に買ったばかりの黄色い可愛らしい包装がされたそれを包ませた。


視線を手の中に映した一瞬の間に神威でその場を後にした。









時刻は夕暮れまで進む。
オビトはイタチとの約束の場所に時間になってもいかなかった。遅刻は俺の十八番だと、内心笑いながら火遁では残されたチャクラを感知して追ってこられる、それでは今後この里に侵入しにくいとオビトは単純に油とマッチを用意した。

油は特殊なもので、無臭のそれは今からオビトがしようとしていることに使うには最適だろう。
本来なら木の葉から三日はかかる道のりを数時間で往復できるのは彼しかいない。


ごく自然に、発火したように、写輪眼目的の他国の忍びの仕業にみせかけるため、ダミーとして日向一族にも火をつけたのは私怨も混じっていたからか。
スズと仲がいい宗家の娘。自然とスズが遊びに来るのは必然で、その時スズに向けられた視線の意味を把握した(主に一日にも満たない時間で調べ上げたスズの情報)からに他ならない。


二大瞳術名家に起きた原因不明の発火にイタチは任務どころではなくなったこと。
見るからに里全体に広がりそうなそれに中心街に住む住人も大騒ぎしたこと。
ついでにダンゾウの隠れ屋敷まで燃えてしまったこと。


里側は予期せぬ事故に必死に犯人を捜した。上層部はその日何があるか、知っていたからこそ、これがただの事故ではないと思っている。正解だ。
一番犯人に近いと疑われたのはイタチだったが、当日はダンゾウ付の暗部が監視していたから犯人ではないと断言できる。何よりイタチ自身、その犯人が知りたいと思っていた。まさか協力者だった仮面の男が私的な理由で一族の救世主だったとは解る筈もない。

その犯人の行動の理由に、たった八歳の少女が関係しているなど努々信じられまい。





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