おぼえていますか | ナノ
07




イノに迫る棒手裏剣に気づいた時、私は足にチャクラを集め、地面を蹴った。

普段は瞬発力を上げる一瞬しか使わない。多くもなく少なすぎるわけでもないチャクラ量の私には、いつ医療忍術を求められてもいいように常にチャクラを一定量温存する必要があるからだ。
だけどそれも、今の妹の様な友が危ない場面を知れば気にしていられない。

記憶があり、前世も忍びだったスズはいつの間にか今の同期を『守る』ことが染みついていた。
里を守る為に、自ら死を選んだ彼女らしい行動は、残酷なまでにこんな状況でも冷静な判断の上のものだった。

スズがそこから軌道をずらそうとクナイを投げようがイノから外れることがない。狂人の放ったそれに跳ね返されるだろう。
ならば動けないあの子の盾になろうと、スズはイノの前に佇んだのだ。


目の前に迫りくる凶器は自分の胸を貫くだろうと、死因まで前世と同じとはなんて因果だと、スズは嗤った。

(前より一年早く死ぬなんて私って昔から長生きできないんだなぁ)


元よりカカシに対して負い目を感じながら生きてきた今生。スズはなんとかして生き延びることよりも死ぬことを受け入れた。自分の価値を正しく理解していないと周囲に憤慨されるようなことを思いながら、諦めた様に哂った。


イノが閉じかけていた瞼を見開くと同時にスズがそうしようとゆっくり瞼を下ろした。









……いつまでたっても衝撃は襲ってこない。
あの、前世で経験したような息の詰まりも、口から溢れだす血液も、内側に入り込む外の温度も、何もかも。一切、既視感がない。

(息ができる、イノを抱きしめる腕の温度も失われていない。痛みもない・・・なら何が………………ッ?!!)

ヒュッと息を呑んだ。別の意味で息が詰まった気がする。


スズがイノを守るように前にいるのと同じように、自分よりも倍近く大きな背中がそこにあった。


黒地に、赤と白の団扇マークの背中には既視感がある。


ゆっくり振り向いた背中の主は仮面をつけていた。
渦模様の、オレンジ色に穴が一つ開いた仮面を・・・。


「オ、ビト・・・?」


穴から覗く赤目が柔らかく笑んだのは見間違いではない。





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