おぼえていますか | ナノ
05




シカマル視点


誰かが「子ども」と呟いたが俺はその殺気とこの場に相応しくない表情に気を圧された。


「ねえねえねえ!!こいつらみーんな俺が貰っていいの?いいの?」


っち、狂ってやがる。だけど情けねーことに足が震えて動けねぇ。ったく、受付も任務のランクと派遣先の情報くらい掴んどけよ。
どう考えても下忍なり立てほやほやの俺らがどうにかできる状況じゃねぇ。アスマはあっちの見るからにヤバそうで異名まで見たまんまの男で手一杯だろうし、逆にこの子どもを俺ら四人で倒せる保証はない。
俺と、イノと、チョウジは狂人とかいう抜け忍の殺気でこんな状態だし、スズ一人に任せると俺らがここにいるのは邪魔だ。っていうかアイツも動けるの・・・動いた。


一瞬で敵の間合いに入る。速ぇ、見えなかった。
正直くノ一で次位のイノも優秀だが一位のスズとの差は歴然だ。
あれか、ナルトとサスケ、でサクラの7班が人間関係は兎も角、実力のバランスを選んだみたいに、うちの班は俺とチョウジを補うためにイノとスズを投入したと。親の印象が強かったが案外その説が強い気がしてきた。現にチョウジよりイノの方が復活が速そうだ。

名門うちは一族出身のサスケ、秘伝忍術を使いこなすシノ、一般の出自で第三位のスズ。
サスケとシノは同じクラスだからその順位も解っていたがスズに関してはくノ一の授業があるから前二人とどうしても総合点が低くなる。もしかしたらアイツ、サスケより強いんじゃねぇか?


なんにしても情けねぇ。女に守られて、いつまでも震えてみてるだけなんて帰ったら母ちゃんに怒鳴られそうだ。
スズをじっと見る。いつもアイツと組むとチョウジとは違った意味でやりやすい。チョウジは俺を信じているから受け身の姿勢でいてくれるが、スズは逆に俺をサポートしてくれる。
自慢じゃねえけどそれなりに頭の回転が速い俺の作戦についてこれるってことは流石優等生ってのと、そういうことに慣れているって感じがする。

そこが昔から引っ掛かった。俺と同じ歳、家も普通、条件だけならイノより劣る。親が忍びならもうちっと言い訳出来ただろうが違うし、身体が条件反射でやっているともいえない行動に疑問が生じる。
お前は本当はなんなのか?――何度も頭の中で繰り返した問いを音にしたことはない。


「ひゃひゃひゃひゃぁぁ〜!先にお前から片づけて〜次にあのデブを始末してやるよ〜」

あ、アイツ、チョウジの禁句を言いやがった!

この状況でチョウジが怒り狂ったらやべぇ。だけどまだ殺気に怯えている幼馴染には届かなかったようだ。優しすぎるチョウジにはきついかもしれないがいい加減復活してもらわないといけねぇよな。俺たちは何だかんだでこの額当てを付けるような人間になったんだからよ。


内心では冷静なシカマルだが、その表情は始終顰められている。彼の優秀な頭脳はスズが自分を含む三人と、向こうで戦っているアスマを気に掛けながら戦っている事実を叩きだしているからだ。

アスマと何やらアイコンタクトを取るスズにシカマルはまだ恐怖で強張った身体を無理やり動かし、イノとチョウジを彼らから離れさせようと動いた。
だがその前にスズは全てを終わらせていた。

「でも私は貴方の御片付けが終わるまで待てないわ。」

スズ?と彼女を見る、その時、彼の耳にひゅうん、ひゅうん、ひゅうん、ひゅうん、ひゅうん…という音が届く。同時に敵の叫びが遅れて鼓膜を震わせた。

「あああああああああああああッ!!?いだいいだいいだい」


何が起きたのか・・・解っていてもそれが真実だと認められない。
確かにスズには昔から不審な要素があった。同年代とは思えない、穏やかな気質やら経験者のような術の応用の仕方、説明、指導。彼女のアブノーマルを同班になって、身近で見て、感じて、シカマルは恐れると同時に言いようのない苛立ちが胸を占めた。


そして、

「チョウジの体型は“デブ”ではなく、“ぽっちゃり”よ?」


ね?と同意を求めるようにこちらに視線を向ける。その笑みに全身の緊張が解けるような気がした。なにより自分と彼女の違いを見せつけられたような錯覚をする。

(んだよ、お前は何なんだよ・・・)


いつかこの疑問の正体を暴いてやる。シカマルは、今は唯逃げるしかできない自身を嘲笑うようなスズとの力の差を自覚した。





prev next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -