おぼえていますか | ナノ
04




「子ども?」


相手はまだアカデミーにも入っていない歳頃の少年だろうか…それにしては痩せている。
終戦から10年以上経ってはいるがそれはあくまで大国だ。小国なら小規模の戦争がまだ続いていてもおかしくない。

つまり戦争孤児の可能性もある。

アスマもそれを悟ったのか険しい表情で敵を睨んでいる。


私とアスマとは違い、この場に似つかわしくない自分よりも幼い子どもの登場に吃驚するイノたちを見取って拙いと感じた。


あの子は屹度『殺し慣れている』のだから・・・


「ねえねえねえ!!こいつらみーんな俺が貰っていいの?いいの?」


そしてその無邪気さに反して唯の子どもと云えない殺気に霧隠れの狂人同様、善がった表情はこの場の雰囲気には適さない、不気味なものだ。

ランク違いの任務でもサスケたちの方が敵の相方を考慮するとマシだったみたいね。
戦争孤児でこういったことに手を染める輩は多い。それを生み出しているのが先人である私たちだけど・・・ギリッと奥歯を噛み締める。
狂人相手ならアスマと互角か、いや、地理を生かされたら向こうが有利だ。逆にこの子どもの相手は私がすべきだろうが、敵がシカマルたちに手を出さないとは言い切れない。

何とかこの場から二人を引き離すことが先決ね。アスマも同じ考えらしい、目が合い頷き合うと私はホルスターからクナイを一本掴むと逆手に持って子どもの懐に入った。
地面を蹴ると同時に精密なチャクラコントロールで体術と武具を生かした近距離戦を繰り広げる。

こちらの目的が解っているのか、中々動いてくれない。こちらの思惑に気づいたシカマルが先導してイノたちを連れていこうとするが殺気で動けない。
ああ、もう、こんな時ミナト先生なら「大丈夫」とか声を掛けてくれるのに!!

ジロッとアスマに、お前の役目だろうが!と睨みつけたが、無理謂うな!もう少し待て!と返された。情けない。
もう!この分じゃ私の方が先に終わるわよ。


「ひゃひゃひゃひゃぁぁ〜!先にお前から片づけて〜次にあのデブを始末してやるよ〜」


あ、チョウジの禁句を・・・チラリと確認したがまだ慣れない殺気に固まっているためいつもの「デブじゃなーい!」が出てこないみたい。

クルクルと、クナイの取っ手にある穴に指を通して軽く二回ほど回し、ホルスターに戻る。これで10本全ての指が自由になった。
敵に向かってにっこり微笑み、


「でも私は貴方の御片付けが終わるまで待てないわ。」

左三本、右三本、計六本の指を手前に引いた。


「あああああああああああああッ!!?いだいいだいいだい」


それと同時に上がる悲鳴と血潮。

大分手加減したから肉までは達していないとは言えども骨ごと切り落とせる糸――曲弦糸が空を切った。
本気を出せばあらゆる情報を手にし、強靭な肉体を持つ大男でも細切れに出来る私の武器。

前世では主に忍術と医療忍術を活かしたサポート役に回っていた私。生まれ変わってアスマ班に着いてからは専らシカマルのサポート役に徹していた。
IQ200以上の天才の考えを私が読み取れるはずがない・・・が、あくまでそれは100以上の手段に対してであり、すぐ近く、現状の二手、三手くらいなら私にだって解る。伊達に『天才』と言われたカカシや『意外性』が強いオビトのサポートをしていないのよ。

そんな私は今までの任務で常に思考しつづけた。考えるのを止めればシカマルに追いつけなくなるからだ。こういう戦闘中でも熱中こそせずとも思考を続けていた前世があるからこそ、今、私は思考を止めることができる。

身体に馴染まなくとも頭に刻まれたメモリーには“経験”が詰まっている。
曲弦糸とは戯言シリーズの零崎人識が使っているが、私の今生の武器にさせてもらっている。

拘束術として使うためにトラップを張り巡らすには時間をくれない相手だからこそ、本能で動く必要があった。
子どもだからと侮れない敵だが、行き成り『殺す』のは私の忍道に反している。だからこそ『零崎』でない私が使いこなすのも難しいという問題があるが。


全身を血まみれにした相手を見下ろしながら、一呼吸し、謂いたいことを一つ。


「チョウジの体型は“デブ”ではなく、“ぽっちゃり”よ?」


ね?と同意を求めて振り返ったらシカマルたちから微妙な視線を頂いた。なんでだろう?




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