おぼえていますか | ナノ
03





のはらスズ改めかがちスズは今窮地に立っている。
一番顔を合わせづらい初恋の相手でもなく、生前の姉御肌な女友達でもなく、これといっていいほど一緒にいたのでも別段仲が悪かったわけでもないアスマが担当上忍だからと油断したのが悪かったのだろうか。

ヒナタと別れて簡易な変装をしたのも万が一紅やカカシとすれ違った場合に備えてだ。アスマ単体なら化粧もせず、いつも通りで顔を合わせただろう。

しかし現実は彼女の予想をはるか斜め上にいってしまった。
気付くはずがないと嘗めてかかった相手の視線が現在進行形で痛い。


スズの心情に合わせる様に身体が心なしか小さくなっている気がする。ああ背中を丸めて隠れたい。チラリと窺ったアスマの瞳に誤魔化しきれないものを感じ取った後、ただひたすら視線を下に向けていた。自己紹介の時はイノとチョウジに挟まれたが内心荒れ果てている彼女には自分の番の時、何を云ったか思い出せない。

アスマの吐いた煙で涙を浮かべた三人とは違いこれからどうしようかと不安に駆られて自然と流したそれは奇しくも同じタイミングだったためシカマルたちに不審がられることはなかった。


自己紹介が終わり、明日の演習の説明が終わった後帰路に着いた。そう、着いたはずが呼鈴が鳴り向かった玄関先にいたアスマの、あの場で問い詰められなかったことに対して感謝すればいいのか、それともそのままスルーして欲しかったと思う方が強かった。


「話、いいか?――・・・スズ」


コクンと一つ頷いて逃げ道がないことを悟った。




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