おぼえていますか | ナノ
01



 アカデミー卒業間近。というか明日だ。
それにもかかわらずクラスメートは十人十色。各々緊張しているようには見えない。
特に、


「ナルト―――ッ!!?」
「へへェ〜ンだ!!お前らにこんなこと出来ないだろ〜」


「またナルトかよ」「イルカ先生も大変だね〜」という生徒の目はどちらかを心配したものではないし、呆れたものだ。


「な、ナルト君。大丈夫かなスズちゃん。…スズちゃん?」


今日スズの隣に座っているのは日向ヒナタ。大人しく引っ込み思案な気質だが一途にナルトを想っていることでもくノ一の間で有名だ。そんなヒナタは当然ただ一人ナルトの心配をしているが、いつもはすぐに「そうだね」と返答してくれるはずの友人が黙っている。

不信に思い、ナルトから視線をスズに移すとヒナタは驚愕した。


「スズちゃん?!」


友人が真っ青だった。ガタガタと震え、両腕で身体を抱きしめるように小さくなっている。
ヒナタの悲鳴が聞こえたのか、周囲もなんだなんだと彼女たちを見ると、それに気づいたのかスズは何時もの彼女に戻っていた。「大丈夫、ごめん何でもないよ」と笑うが隣にいたヒナタはまだ様子が可笑しいことが分かる。


小さく、彼女の意を汲んで名前を呼べば「ヒナタも、何でもないから」と返された。
ヒナタはその後も何度も外を、窓に視線を向ける友人の姿が印象深く、記憶に残ったのである。




  ***






(失敗したなぁ…)


屹度ヒナタに心配をかけただろう。教室であんな態度、取るべきじゃなかった。

だけど、皆が「またナルトかよ」と騒いだから『嗚呼原作の第一話だなぁ』とこの後の出来事を想像して笑いを堪えながら、歴代初の火影岩落書きを見ようと視線を外に向けた。

ほんとに何気ない動作で、心臓が凍り付いたような感覚に陥った。
――紙面上で知っている仮面をつけた誰かがそこにいた。


「―オビト―…?」

隣にいたヒナタには聞こえなかったと思う。でも小さすぎて呟いた私でも聞こえないくらいの音量にその仮面を揺らした後、消えた。


その記憶にある消え方にやっぱり彼がオビトなのかもしれない。



今すぐ教室を飛び出して追いかけたいけど足が震えて動かない。
足だけじゃない、腕も身体全身が震えて治まらない。

ヒナタの悲鳴と、無数の視線にハッと、意識が戻った。
そのあと何度か外に視線を向けるが映るのは、困惑した表情でこちらを見つめ返す自分の顔がうっすらと反射される。

今じゃ数年前より、生前の姿に、のはらリンの姿に戻ってきている。

スズは、そのあとの変化の術のテストでナルトがまたやらかしたことにも上の空のまま、これからの未来がどうなるのか、ぼんやりと考えた。





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