03
頭を抱えた。名前は前と同じ、顔も両親が違うのに変わらない。
母がいるとき尋ねた日付は私が死んでから7年経っている。
今の私は今年6歳、少し遅れるが、それでも無事アカデミーに入学できると謂われた。
（なんだか複雑だなぁ）
もうとっくの昔に卒業し、中忍にもなった自分がまたアカデミー生とは。
これからどうしよう。よくよく考えるとカカシやオビトのこともそうだけど、ミナト先生は原作通りならもういない。退院したら先に先生のお墓参り？
でも自分で言うのもあれだが、今のかがちスズは前と同じ、私がリンに成り代わったとはっきり言えるくらい彼女と瓜二つ。ここが私がいた世界と平行世界であったとしても間違いなくリンそのもの。もし先生のお墓参りなんてして見知った同期の皆に逢ったらどうしよう。
幽霊だなんだと騒がれそうだ。
そもそも誰が信じる？それに前世の記憶があるなんて、まず可笑しい子だと思われる。
私だけなら兎も角、何かの事故で大怪我を負って入院した今の私。やっと目を覚ました我が子が突然可笑しくなったと、母を心配させてしまうだろう。ひょっとしたら倒れるかもしれない。
今の父は数年前に殉職したから母子家庭なのだ。たった一人の家族を泣かせたいわけじゃない。幸いとは言い難いが、前の私の両親はもう殉職している。二人の両親で戸惑うことはないけど・・・同期（皆）がなぁ……
思わず頭を抱える。
話すか、隠すか。せめて三代目には謂ってしまおうか。あの人なら信じてくれそうな、そんな穏やかな安心感がある。王様の耳はロバの耳と言葉を吐き出したあの美容師の気持ちが今非常に分かる。秘密を抱えるって苦しい。でも彼のように吐き出せる勇気もない。
そして数年。結局元同期の皆には逢いに行けず、遭遇しないように気づかれない程度に外出時も気を使いながらミナト先生とクシナさんの息子でこの世界の主人公と同期スタートをしてしまった。享年14歳とはいえ二度目三度目、周りの子が弟や妹にしか見えなかった。屹度ものすごく浮いていると思うけど、嬉しいことに大人びた子もいるからそこそこストレスも感じずやっていける。
予想外にもオビトと同じうちは一族、そう、あの「サスケ」が同い年だけど姉のように慕ってくれたことに吃驚した。今は呼び捨てだけど、あの事件が起こる前は「スズ姉さん！」って無邪気に笑いかけてくれた。なんで一応同年代なのに姉と慕っていたのかというと、アカデミーの的が懐かしく、つい本気でクナイを投げてしまい、練習に来たサスケに見られたからである。
キラキラと「兄さんみたい！」と尊敬の眼差しにまさか「二度目ですから」とは言えない。
はははっと苦笑した私に何を思ったのか先生と呼び出した。流石にそれは・・・というと「じゃあ姉さんだ！」と。何それ子供の考えること分かんない。何とか言いくるめてここで見たことを誰にも言わないと約束させ、今も付き合いがある。
オビトと違ってクールなんだなぁ。うちは一族って皆似てるようで似てないなぁと思う。
このサスケも数年後にはあの原作サスケみたいになるのかな？オビトに振り回されちゃうのかな？なんだかオビトが関わるとすごく罪悪感。うちは事件だって、止めたくてもいつ起こるのかも分からない上に私はアカデミー生、どうしろと？オビトが来るの？とあの神社周辺をうろついてみたけどいない。夜遅くはお母さんが心配するからいけない。
三代目に進言しようとすれば何かが邪魔をするように都合がつかないし、ただの子どもの好奇心で会いに来たとしか思われていないので時間も取ってもらえない。
だが不思議なことに、一族が皆殺しにはならなかった。サスケのお兄さんも里抜けではなく、長期任務に出たって。事件というのはその日、うちはの集落が大火事が起き、奇跡的にも死亡者はゼロ。火遁を扱う一族で火事ということで里内では色々陰口を言われていたのもあり、サスケは何かに取りつかれたように修行を始め、次第に原作サスケみたいにつんけんした感じになってしまったのである。
なにも出来なかったわりに、いい方に物事は進んだ。
だが私を責めるかのようにオビトはいつも夢に出てくる。頻度は昔よりも減ってきたが、それでも月に一度は必ず。
・・・これは原作と違うようでオビトがすることは変わらないという暗示なのだろうか？
でも、あの勢いだと、もし対面でもすれば思い余って監禁されてもおかしくないような気がする。割と本気で。原作でもリン至上主義だったし。二次小説でもそんな扱いだったし。
リンじゃないけど、前の私ってリンそのものだったから余計にそう思ってしまう。
悩みは尽きない。もうすぐ下忍になるというのに。
はぁ、と重たいため息をついたが悩みが解決することはなかった。
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