おぼえていますか | ナノ
01




 もうすぐ卒業か・・・。


スズは干渉に浸っていた。他の皆はもうすぐ下忍になれると期待を胸に、待ちきれないといった様子であるのに対してだ。

何故なら彼女にとってこれは二度目だから。もし彼女が皆と同じように初めての時は同じようにはしゃいでいたかもしれない。その時と共に喜ぶ仲間も違う。

そう、彼女は一度死んでいた。
正確には一度ではない、だが自覚したのが今の生の時だ。


スズは小さいころから見る夢が“夢”ではなく、現実に自分が体験したことだと自覚していた。







 地獄のような世界に絶望する少年の腕に抱かれた少女は、里を守る為、好きだった少年に殺されることを選んだ。彼の右腕が自身の左胸を貫く。驚愕する彼の目を通して彼女は失ったはずの仲間と目が気がした。


「…カカシ」


彼の名前を呟くと喉の奥から鉄の味がする。吐き出したそれが口元を汚すが、降り続ける雨が洗い流した。

遠のく意識の中、夢に出てくる少年の顔を森の入り口に見た気がした。









 次に目を覚ましたのは病院だった。
見舞いに来てくれていたらしい母親が目覚めたスズに気付くと、抱きしめて、よかった本当によかったと涙をぼろぼろこぼした。
すぐに医師も呼ばれ、手術は成功したが怪我が重く、手術後も何度か生死の境を彷徨ったという。容態が安定した後もなかなか目を覚まさず、母にはひどく心配をかけてしまった。

しかし、怪我の完治までは時間がかかるが後遺症のないから大丈夫だよ、と担当医は笑った。
泣いたせいで赤くなって目を細め安堵の息をこぼす母を見て、嗚呼助かったのだという実感が沸いた。

だが可笑しい。死ぬつもりだった。風穴があいたはずだ。医療忍者の私からみても絶望的だった。それに敵は?カカシは?…最後に見たオビトは本物なの?

三尾を封印されたはずなのに、なぜ?

封印された直後から感じていた自分じゃないもののチャクラも今は存在しない。
まだ暫く横になっていなさいと笑う母は、母だけど“母”じゃない。

可笑しい、私は確かにこの女性を母だと思うのに母ではないとも思っている。
医師もだ。病院にはよく出入りしていた。大体の医師は把握しているが、彼は知らない。



分からない、何もかも。
そもそも病院のベッドはこんなに快適だったか?
もっと窮屈で、改善提案を出していたばかりの頃だ。任務で留守にしたとはいえあれからどれくらい日数が経過したのか分からないがそれにしては早すぎる。


モヤモヤと思考を繰り返しながら再び眠りについたその晩。
私はあの『夢』を見て、真夜中、飛び起きた後・・・泣いた。





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