おぼえていますか | ナノ
02



本戦出場まで一か月。
メンバーは木の葉からはサスケ、ナルト、シノ、シカマル、ネジ、そしてスズ。スズの対戦相手だったイタチは兎も角、オビトはどうしたのかというと彼は棄権していた。

いや、正確には予選で棄権負けしたのである。


時は数日前に遡る。
スズが勝利した後、異常なほど彼女を祝福していたオビトはシカマルに肩を叩かれ「ああん?!」と苛立たしげに振り返った。そしてメンドクセーの言葉と共に指差された掲示板には『うちはトビVS薬師カブト』の文字。

オビトをよく知らないナルト達は当然のように世話になったカブトを応援する。スズはこっそりカカシを窺った。自身の時はあんなにも凝視していた彼も、昔と寸分違えずそっくりそのままなオビトに反応するかと思いきや、全くない。昔と今の違いといえば服装とゴーグル。不思議がるスズだが、まさかカカシの中でオビトといえばゴーグルがトレードマークで、それがないから本人だと思わない、他人の空似で済ましているとは思いもしないだろう。


オビトは戦った。圧勝だった。赤子の首をへし折るように、ただでさえ火影、上忍、中忍の前で本来の実力を発揮できないカブトを甚振るかのように手酷く扱った。苦戦し、傷つき冷汗と鮮血を流すカブトに対して悪役のデフォルトのような極悪非道な笑みを浮かべるオビト。観客がどちらが悪か、事情を知る者さえカブトに同情した。

満身創痍なカブトを見て、流石にハヤテがオビトの勝利宣告を上げようとすると、オビトがその前に挙手した。


「参った」


たった一言、会場が静まり返った。

「え、あの」
「だから俺の負けだ。勝者はコイツ、早くしろ」


くい、と顎でカブトを示し、オビトは腕を組んで一歩下がる。上から「どういうことだってばよ!」という叫びが聞こえても無視した。

彼は真っ直ぐ、ある一点だけ見据える。
そこには頭を抱えたスズがいた。


オビトは元々本戦に出る気はない。
なら何故もっと早く棄権しなかったのかというと、単にスズの傍にいたかった。それだけである。そしてどうしてカブトをぼろ雑巾になるまで痛めつけたのかというと、それも単に大蛇丸の戦力を削る、ただそれだけであった。


デメリットは事情を知らぬ人間からの冷たい眼差し。ただしオビトの心にダメージはない。



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