おぼえていますか | ナノ
01


最終日前日。まだサスケが、と塔に入ることを嫌がるイタチをオビトが引きずって、中に入る。中には誰もいない。二つの巻物を他の受験生と同様に、だが彼らよりも淡々と同時に開いた三人は、そこに書かれていた『人』の文字を見た瞬間巻物を放り投げた。

ポン!煙と共に現れたのは、見知らぬ中忍。
オビト、イタチを見るなり顔を顰めた彼は第一次試験で彼らの奇行を目撃していた監視員だが、彼らはそんなこと知らない。初っ端から不快な気分に陥り、ややぞんざいな口調で「早く説明してください」とイタチに促され、漸く口を開いた。

だが彼の中忍とは何たるか〜という説明をすでに経験済みな三人は頻りに、「あ、それはいいんで次」と話を遮る。彼是10数回目の「それはいい」に彼は涙目ながら部屋で待機するように言いつけ、速足でその場を立ち去った。





「えー…皆さんには第三次試験の前にやってもらいたいことがあります…ゴホゴホッ!」

顔色の悪いハヤテに、オビトとスズは彼が全く変わっていないと思った。周りはハヤテの癖のような咳に動揺しているのが分かり、内心コイツ大丈夫かよと疑っているのが分かる。だがスズたちは人を見かけで判断してはいけないのを体現しているかのような奴だと真っ直ぐ前を向いて彼の話を平然と聞いていた。


「…本選の出場を懸けた予選を行いたいと思います」

途端、二次試験の合格者たちに動揺が奔る。
不平不満を口々にする彼らだが、文句を言っても意味がないと解ると、渋々といった感じで上へと上がった。

上には各班の担当上忍が待ち構え、部下に激励を口にする。

スズの背中に衝撃が走る前に、オビトがスズを抱えて横にどいた。

「ちょっと〜!なんで邪魔するのよぉ!」

空振りを喰らったイノが怒る。対してオビトは全く聞いていない。
苦笑したスズがオビトに目で礼を言い、イノに向き合った。


「イノ、久しぶり」
「あ〜ん!スズ久しぶり!私たちより先に来てるって思ってたのにいないんだもん。心配したじゃない」

どうやら10班はそれなりに余裕を持って合格したらしい。抱き付くイノの頭をよしよしと撫でていると、近づいてきたシカマルたちにお疲れ様と口パクで伝えた。

「おい小娘。スズから離れろ」
「何よぉ〜あんただって餓鬼じゃない」

しかもサスケ君よりかっこよくないし、とイノが何気なく口にしたそれにオビトは凍り付いた。

ベリッとイノからスズを引き剥がし、その肩を力一杯掴む。青褪めた顔で震える唇から紡がれる「お、おおおおお俺よりも、さす、さす、さささささサスケ方がいいのか?なぁ?」にスズは口端を引き攣らせた。

横からイタチが「当然だろう」と返したのも、今のオビトを余計不安にさせた。


暴走したら最後、それがうちは一族。位置的にスズにはイタチの口を塞ぐことができない。そして気づく。周囲からの視線が痛い。

ここでオビトの名前を口にすることも出来ない。よって、


「スズ!?」

年頃の少女たちから黄色い声が上がるのも気にせず、オビトに抱き付くことしか出来なかった。



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