おぼえていますか | ナノ
06


何だかんだであの後無事にオビトたちの所まで戻れました。だけど目に入った光景に思わず悲鳴が上がる。

「い、イタチさん?何してるんですか…?」

咄嗟のことに偽名ではなく本名で呼んでしまったが。
なんと!オビトを押し倒し馬乗りになるイタチさんの姿が!まさかこの二人は……そういう関係?ゴクリ。同棲中の恋人が同性愛に目覚めていたことにショックを隠し切れない。

恐る恐る

「誤解だ!俺はスズ一筋だ!!」

オビトが必死こいて弁解している。じゃあイタチさんにそういう趣味が?

「俺が悪いみたいな言い方はやめろ」


あ、違ったみたい。イタチさん曰く「揶揄していると反応が面白いから」らしい。それを聞いたオビトが怒る。
でもそれ分かるなぁ。オビトってうちは一族では喜怒哀楽がはっきりしてるもの。同族なのでにここまで違うのか!って二人が並ぶとはっきりする。

同年代のイタチさんってのが見慣れないけど、オビトはどこか懐かしい。試験が終わっても偶に変化してもらおうかなぁ。
ぼんやりとそんなことを考えていると、唐突にイタチさんが顔を向けた。

「それでこれからだが……どうだろう。こんな森の中で数日過ごすのはスズも嫌だろうし、トビと二人で神威空間に入ればいい。なにかあったら俺が連絡する」

「ッ!!(イタチナイス!)」

「え、イタチさんも来ればいいのに。私たちだけなんて悪いですよ」

イタチさんにそんなことさせるなんて…と躊躇するスズを大丈夫だって!じゃあイタチ後は任せた!行こうぜ!とグイグイ腕を引っ張るオビトはご機嫌だ。イタチは菩薩のような微笑みのまま消えゆく二人に向かって静かに手を振った。


ポツン。そこに残ったのはイタチただ一人。

「これで少しは発展すればいいんだがな」


実はオビトに同情したイタチなりに気を利かせた行動である。さてと、イタチは愛する弟の様子を見るべく、その場から瞬身で消えた。


***


神威空間には空がない。
あるのは真っ暗な天井と白い箱が浮かんでいる。その先、奥深くに行くとオビトが十数年前に作ったのはらスズの遺体が収められている墓が存在する。今では時折オビトが掃除に立ち入るだけで、閉じられた空間だが、つい最近では全く別の用途で創られた空間が存在した。


「うわぁ、意外と明るいのね!」
「あ、ああ」

スズが初めて入った彼氏部屋ならぬ、彼氏の異空間。最初に目に入ったのは、先に述べたように薄暗い中で複数の箱が浮遊している空間。そこから元の姿に戻ったオビトに案内された先は、想像以上に普通だった。

机、椅子、窓の外には青空が広がって、室内に光を差している。本棚にはギッシリ分厚い本が並んでおり、扉付のそれはガラス越しではっきりとタイトルが見えない。机の上には写真立てがあり、オビトの両親や昔のミナト班が残されていた。


「昔のオビトの部屋みたいだね」
「う、うん」

さっきからオロオロして、挙動不審なオビトを訝しげに見つめているスズは知らない。彼女が本棚に近づく度にビクリと肩を揺らす男を。写真立てに納まりきれなかったスズの写真のアルバムが本棚に並んでいることを。

「(ばれたら引かれる、よな・・・?でもスズの写真は捨てられないし、ああでも自分でもちょっと変態くさいって自覚してんだよぉぉ!!)」

オビト、ピンチ。


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