おぼえていますか | ナノ
04


第二次試験は死の森で行われる。ゴール地点の塔まで巻物を二つ揃えて辿りつけばいいそうだ。派手な登場をやらかした元友人に苦笑しつつ、手渡された同意書に(オビトが涙ながら「絶対スズを死なせないから!そんなの書かなくてもいい!」と騒いだので宥めつつ)サインして巻物と交換した。

その間イタチがジッとサスケを見ていて周囲から引かれていたが、スズはオビト1人しか相手にできないため気づかない。

もしこの場にうちは一族の特殊性をよく知る千手扉間がいたならば、愛に生きるうちは二人に挟まれ、その内1人に常軌を逸した愛情を注がれている彼女を尊敬しただろう。

スズは手元にある「天」と書かれた巻物をジッと見つめた。

「オビト」
「んっ、」

シュルシュルとオビトの右目に吸い込まれていく巻物。

「お前もこういう時には役に立つな」
「悪かったな」

「うん。オビトって便利ね」

スズのためなら何でも吸い込むぞ!

「……ありがとう(まァ盗られる心配はないか)」





適当に襲い掛かて来た敵をなぎ倒して複数の「天」と「地」の書を手に入れたスズたち。スズに苦無を投げつけた敵を木遁・挿し木の術で串刺しにしたオビトが一番活躍したのは言うまでもない。一日目(それも始まって数時間)でゴールするわけにもいかず、イタチの提案で最終日の前日に塔に入ることになった。

スズが河で水を汲みに行っている間、オビトは涼しい顔をしたイタチに訊ねた。

「おい、お前もしかしてサスケの様子が見たいから今すぐゴールすることに反対だったんじゃねぇのか」

それがどうした?


なに当たり前のことを聞いていると、さも不思議そうに返すイタチにオビトは渋面を作る。自分も相当だが、コイツも相当うちはらしいぶっ飛んだ愛情だなぁと、血族の厄介さをしみじみと思う。うんうん唸っているオビトに対してところで、とイタチが口を開いた。


「スズちゃんを一人で行かせてよかったのか?」

彼女の実力なら砂の額に愛を主張している少年とどこかに潜んでいる筈の大蛇丸以外にはそう簡単に敗れはしないだろうがスズ命と公言している男にしては珍しく大人しく待っていることに疑問を感じた。

今のオビトはチャクラの無駄だと変化を解いているため、実年齢の体躯を保持している。仮面を外した彼は同じく変化を解いているイタチと並んでも同年代に見えるほど童顔だが、同時にイタチの老け具合も際立っていることに二人は気づいていない。

スズはそんな二人を見て笑いを堪えるために外に水汲みに出かけたのである。

所でオビトは眦を赤く染めつつイタチの問いに応えた。

「いや、だってよ、………スズも女の子なんだし風呂には入れないけど身体くらい拭きたいだろ?」

ごにょごにょ、所々聞こえづらかったが、イタチは三十路一歩手前のおっさんの思春期の少年染みた照れ具合に呆れつつ、内心で「あ、コイツそういえばその思春期から時間止まっていたんだった」と彼の経歴を思い出してどこか納得していた。


「…そうか。でもお前、よくそういう女性ならではの事情を理解したな」

一言に色々な意味を籠めつつオビトの気遣いを称賛する。しかしオビトはその科白に顔を一瞬昏くした。

「……昔、小南の前で気を回さなかったせいで半殺しにされたからな」
「…………“トビ”モードだったのか?」

「ああ。ちょうど飛段と角都もいたからな」
「…そうか」


二度目の「そうか」は先ほどよりも若干労りの気持ちが乗せられていた。
気恥ずかしかったのかオビトは神威で収納していた布団一式を取り出す。イタチはその様子を無言で見つめながらその便利さに感心しつつ、二組しかない布団を見て思わず、


「お前はスズちゃんと一緒に寝るのか?」

と訊ねる。特に悪気があったわけではない。あまり感心しないしがスズ自身がオビトを好きなんだとイタチに言ったこともあるため(オビトの方は態度で解る)、てっきり二人は恋人なんだと思い込んでいたからだ。

オビトは途端火がついた様に顔が真っ赤に染まった。ボッと蒸気が薄暗い洞窟の天井に立ち昇る。


「……お前、まさか、童貞?」

「…あ、う、///////////」


体は大人、心は少年のうちはオビト。
身体は青年、心は聖者なうちはイタチはその反応にちょっぴりだが、オビトという男に弄りがいがあると好感を抱いたのだった。



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