おぼえていますか | ナノ
03


静寂。100人を超える人数が集められた室内にも関わらず、“中忍選抜第一次試験”が始まると同時に人の話し声は消えた。

カリカリ、ガッガッ、……、複数の鉛筆の芯が削れる音。その音から受験者の心情が読みとれるかもしれない。「カリカリ」は安定した音。断続的に、時に動きを止めることもあるが、あくまで鉛筆が机の上に置かれるまで響かせる受験生の面持ちは自信に満ちていた。

一方で「ガッガッ」と書きなぐったような、焦りすら感じられる音を出すものには余裕もなさげで、彼らは試験官から一番多く「失格」の通知を言い渡されていた。

そして最後の「……」の受験生は最後に出題するとあらかじめ予告されている、まだ解らぬ第10問目に全てを賭けようとしていた。


試験官たちはいかに彼らを減らすか、そのために一定の基準を越えない情報収集を行ったものは容赦なく失格にしていた。担当の区域をそれこそ目を光らせて監視する。だがある二カ所を任された試験官二名は始終顔を引き攣れせていた。


「「((何なんだよコイツ?!!))」」


その二人、名をうちはトビ、うちはフェレットという。



カンニングをするためでもない。彼らの手元の受験用紙はきっちり十問目以外埋まっている。なら答えの確かめか?いや違う。

彼らが気になって仕方がない少年二名はジィィィィ…!と食い入るようにとある少年少女を見つめていた。

受験票を確認すれば少女の方は彼ら二人の班員で、もう一人の少年は見つめているフェレットとかいう少年の親族らしい。そして何よりも試験そっちのけで少年少女の動向をガン見している二人の姓は「うちは」。あのエリート一族と名高い木の葉の旧家出身の人間に少なからず憧れを抱いていた試験官の夢は砕かれた。



「(うわぁ、後ろからオビトが凄い見てくる)」
「(ッ!?何故だ…兄さんが近くに居る気がする?)」
「(……あれってもしかして)」


取りあえず、スズたちは第一次試験に合格した。




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