オビト、嗤う
絶望した。
スズに嫌われた。(誤れば許してくれると思うけど)今は顔を合わせづらい。
遊園地のベンチに一人腰かけ顔を手で覆うオビトの前を走り去る少年がいたが、今のオビトは気づかなかった。
いつまでもこうしていたら余計謝りづらい。
オビトはのろのろと立ち上がり、取りあえずカップルだらけの空間からの脱出を試みた。
むしゃくしゃしている。腹の底がグルグルとして気持ち悪い。
あてもなく彷徨っていると更に人気のない場所に佇んでいた。
ここはどこだ。
キョロキョロと辺りを見渡していると既視感をおぼえる黒ずくめの二人組を発見。八つ当たりだと分かっているがそいつらをブッ飛ばした。拳についた赤色を男の黒いコートでふき取るとそのポケットに入っていたケースに気づく。
なんだこれ。
パカリと開いたケースには一見普通そうに見える薬。そーいえばさっき同級生にも似たようなもの飲ませてたな。一つ二つくすねて持っていた睡眠薬と交換してケースを元に戻す。携帯のGPSで確認した現在地は自宅まで結構な距離があったので今日は神威空間で寝ることにした。
案の定、そこにはカカシがいた。気持ち悪い事に寂しがりやな奴は喧嘩するたびにここで寝てる。いつもなら翌朝謝って仲直り、になるけど今回は許せねぇ。ちょうどいい、この薬を使おう。何の薬かしらねーけど、あの同級生は確かこの世界の主人公だってスズ言ってたし、多分これ飲んだけど死なないだろうし。
「カカシ、カカシ」
「ん……おび、と…?」
「カカシ、あーん」
「あ、…―ん」
よし、飲んだな。
多分腹壊すとかそんなもんだろう。
前世の耐性をそのまま受け継いだのか毒が効きにくいカカシなら大丈夫だろうと思っていた俺は、翌朝隣で叫び声を上げた子どもに唖然と口を開くのだった。
スズも呼んで三人で神威空間で話し合い中。
「それで身体が縮んだ、と(コナン君か!)」
うわぁ、と憐れみの眼差しを向けるスズ。どんな感情だってオレ以外の男に向けるのが気に入らない。カカシはカカシでさっきから煩い。
「犯人はお前しかいない!」
「はぁ?!断定かよ!」
俺を見るなり首元を掴んで「お前か!」と詰め寄ってきたコイツの頭の中には他の選択肢がないのだろう。そうだけど、なんかムカつく。
「だって俺、オビトかスズ以外の前なら熟睡できないもん。気づくよ!」
はぁ?!
「あ、デレた」
いらね。カカシのデレとかいらね。
スズのならいくらでも欲しい。ツンでもいい。ヤミ系でもいい。
「俺スズになら縛られても…」
「馬鹿(オビト)、また声に出てる」
「オビト…」
また怒られるかと思いきや、スズは頭を振って「よし」と一言。うん、なんか可愛い。
「カカシ、もう一回小学生ね」
「え、」
絶望し頭よりも真っ白になったカカシを置いて、俺は久しぶりにスズからのお願い以外で嬉々として奴の編入手続をやった。
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