主人公&弥彦視点



 砂隠れの里には裏ルートで侵入したが、これは主にダンゾウ先生と砂の相談役チヨ様の手引きである。俺自身の実力ではない。そう頻繁に会えないからかサソリからは会う度に熱烈な歓迎を受けるのだが、サソリの二つ名<赤砂のサソリ>を情報屋から聞いた時に一つ大事なことを思い出した。

サソリは里を抜け、人傀儡と化し、永久の美に拘る。そして原作が始まるころには数百体もの人傀儡を作成していること。人傀儡には死んだ人間(それも大半が血継限界持ち)が必要なこと。

うん、俺みたいな弱虫チキンはまず人傀儡にされないと安堵するかもしれないが、この間サソリに「ユウは俺の知る中で一番強いな。三代目風影以上だ」と遊女のようにしな垂れ胸倉に頬を寄せて陶酔したようにうっとりと瞳を潤ませながら不吉なことを云っていた。

その時背中に冷汗が流れたのは、俺の身体を蛇が這う様に撫で回すサソリの手つきのせいだと思う方がマシだろうか、いやどっちもどっちだ。


ということで暫くサソリから離れるため、俺は砂隠れから他国へと向かった。砂隠れの次にダンゾウ先生の口利きが使えるのは、ここ、雨隠れの里である。………いや、いや、違うだろう!?着いてから言うのもなんだけど此処って確か暁のボスがいなかった?裏ボスでも黒幕(あ、裏ボスと意味同じかな?)でもない、表のリーダーだけど、伝説の輪廻眼を持っているペインこと長門さんがいるじゃないですか!

多分もう自来也さんと出会った後だから、忍術使えたはず……やべぇ超怖い。

足が生まれたての小鹿のようだ。よし帰ろう。

ここまで送ってくれた根の子にその旨を伝えようと振り返ったら、そこにはもう見慣れた暗部面を被った彼はいなかった。あれ?


「あんた、誰だ?」

代わりに橙色の髪を持つ少年が怪訝そうにこちらを見つめていた。


***


弥彦視点


俺がその話を耳にしたのは偶然だった。

「<赤い悪魔>がこの里に?」


伝説の忍と謳われる元波風一族の嫡子。戦場に奴が出れば木の葉は負けなしと恐れられたのは一体その忍びがいくつの時からか。幼くして戦場で名を馳せた人物に関する情報は俺みたいな孤児には中々入らない。

暁と言う傭兵組織を作ったが上手くいかない。小国の雨隠れの里を守ってきた<山椒魚の半蔵>様も注目しているという木の葉の三忍よりも凄いらしい赤い悪魔には、この世界はどう見えているのだろう。泣いてばかりのこの里は、かの人物の眼にはどう映るのだろうか。


そしてその赤い悪魔こと、波風ユウとの偶然的な出会いは俺にとってどういった結果を齎すのか、この時はまだ知る由もなかった。


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