主人公&ダンゾウ視点
抜け忍生活三日目。俺は悠々自適に生きている。朝昼夜と三食保障され追い忍の奇襲に怯えて夜も眠れない、なんてこともなく好きなだけ惰眠を貪れる現在。
抜け忍がそんな優雅なわけないって?俺もそう思う。
だって、
「ユウよ、何か不具合はないか?」
何かあったら何でも言え。儂が叶えてやろう。と彼の人物について知っている人間ならまず幻術だと疑いそうなくらい慈愛に満ちた瞳で穏やかに訊ねてくる…――志村ダンゾウ。
そう、俺の師匠の御蔭である。
「…ん?あれは、フガクとヒカゲからか」
ダンゾウ先生の視線は部屋の一室を埋め尽くした箱の山に向けられた。元の俺の部屋よりも豪華な部屋を物置と化した贈り物の数々は全て我が心の友フガク君と元班員のヒカゲ君からだ。
いやぁ、正直ヒカゲ君とはダンゾウ先生やフガク君よりも接する機会がなかったから仲良いとは言い難かったけど贈り物に添えられた手紙読んで泣いた。里の重鎮ポジにつきやすいから日向から情報を仕入れて今回の里抜けについて知ったらしい。実はこんなに想われていたんだと感動したのは三日前だ。
ダンゾウ先生は「全く送られる方の迷惑も考えろあの小僧どもが」とかブツブツ言ってるけどさ、先生から贈り物の数も大概だからね?怖いから言わないけど。
一通り罵言し満足したのか、ダンゾウ先生はくるりとこちらに視線を戻した。
「ところで解っているなユウ」
なにを?と首を傾げたいがここは嘘でも肯定しなければ。
「はい(全くわかりません)」
「そうか。これからも里に尽くせ」
ああ、そういうことか。ほんとこの人木の葉好きだなぁ。ようはあれでしょ?里抜けしたから里外の情報を仕入れて渡せってことでしょ。そのかわり生活は保障してくれるのか(因みにこの部屋…というか家はダンゾウ先生からの贈り物である)。
「はい」
***
ダンゾウ視点
「はい」
意志の強い瞳。赤い髪の間から覗かせる青い瞳に吸い込まれそうなほど眩い光を見つけた。かつてヒルゼンの愛弟子三忍を凌ぐ天才と謳われたはたけサクモと唯一肩を並べられた麒麟児が、この!ダンゾウの弟子なのだッ!!歓喜で胸が激しく振動するのは仕方がないだろう。
一を聞いて十を知る。十を知って百を成す。まさに自慢の弟子だ。同時期に面倒見た残り二人よりも目に掛けただけある。抜け忍となるのだから今までの様に干渉するな?ふざけるな。コヤツを抜け忍にしたのはお前たちだろうヒルゼンよ。
精神的に弱ったユウを甘言で惑わせ、儂から引き離そうという魂胆だろうがそうはいかん!
コヤツは、ユウは儂のものだ!!
この家には儂自ら施した結界が張られている。幾重にも張られたそれに拒まれ、家の前で屯っていたヒルゼン直属の暗部共は儂の根が始末した。フン、他愛無い。
「先生。ありがとうございます」と三日ぶりに顔を合わせた弟子の眼の下には薄らと隈が残っていた。その礼一つに一体どれだけの意味が込められているのだろうか。大丈夫だユウ。ヒルゼンや他の欲深い人間なんぞにお前をいいようにはさせん。
お前は儂の愛弟子なんだから!
***
ダンゾウ夢?いいえ、違います(笑)