主人公視点
世の中何が起こるか解らない。俺は身を持ってそれを知った。
例えば季節外れの大雪で交通渋滞、結果徒歩でツルツルの道を登校するとか。
偶然スリップしたトラックと衝突するとか。
吹っ飛ばされて、打ちどころ悪く、そのまま15歳の若さでぽっくり死んだとか。
ここまでならまだ納得がいく。(いや、個人的にはいかないけど)
だがしかし、
「ばぶ〜(これはねぇーよ)」
そのまま記憶持ちで生まれ変わり、しかも今生の親の会話からここがとある漫画の世界なんだと気が付いたときから俺は決意した。
何が何でも生き残ってやると!
それから後の黒歴史ともいえる赤ん坊時代を経て、俺はひっそりこっそり暮らしてきた。
「ユウちゃんママとおかいもの行こうねぇ〜」と美人なママさんと恥ずかしながら手を繋ぎながら街を歩けば、「待て自来也!」とか「三代目様こんにちは〜」とか、見知ったキャラがちらほらと。
喋るな、関わるな、頭を使え。
動物でいえば俺はチワワだ。ビビりでヘタレ、自分を守る為に周囲をキャンキャンと威嚇する……あ、怖いからできねぇ。違った、俺はチワワ以下の人間でしかなかった。
そんな俺は忍びの両親の期待の入った眼差しを向けられ、「忍者になんかなりたくない」とは言えず、なんと里でも旧家に属する一族の嫡男として立って歩いた頃から始まる修行、修行、修行。毎日死にかけた。だがそれでも「嫌だ」の一言が云えないヘタレなのである。
そんな俺に弟が生まれた。
よっしゃこれで跡目は弟に任せようぜ!とガッツポーズする俺を不思議そうに見つめる爺ちゃん(忙しい両親にかわって俺の世話を焼いてくれた人)に促され、弟を抱いてみた。
余りの小ささに吃驚して両腕が震えた。ママさんがすげえ笑って受け取ってくれるまで落とさないか気を張っていた。
「フフフ……ユウちゃん、今日からお兄ちゃんとして頑張ってね」
…ママさん、弟に全部押し付けようと思っているんで頷きにくいです。引き攣った笑みで誤魔化しつつ、話を逸らすためにちょっと大きな声で弟の名前を尋ねた。
「あら?謂ってなかったかしら?…ミナト、貴方の弟の波風ミナトよ」
俺、波風ユウ。生まれ変わって最も納得がいかないことはあの四代目火影の兄に転生していることである。
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