主人公視点
またまたさらに数年後。俺は相変わらずカカシ君に任せっきりの担当上忍を務めつつ、ダンゾウ先生のパシリとして諸外国を行ったり来たりしていた。
ではこの数年の間に起きた事件を少し説明しよう。重いものを報告するなら、俺の唯一の友、サクモくんが自殺した。うん、重いね。でも正直原作知識からそういう情報は知っていてもサクモ君が仲間から中傷くらっていた時期、俺は長期任務だった。帰ってきたら友人の葬式とか本当に笑えない。え、なに?って戸惑っている間に全ては終わっていた。
「……あ、」
ししょー…と小さな聲で呟いたカカシ君。うわあ、目が死んでる。そりゃあ尊敬していたお父さんが死んだ上に自殺、しかも発見者はカカシ君自身とかもう世界中の全てを呪っちゃうくらいには心病むよね。俺ならとっくに壊れるな。
辺りを見渡し、参列者の顔を見れば流石サクモ君と云いたくなるほど二つ名を持つような有名な忍びが数多く来ていた。だがサクモ君の死を悼んでいるだけじゃない、ひそひそと囁く周囲に怒りが湧き思わず殺気立つ。
「やめろユウ」
トン!と肩を叩かれた。振り向けばフガク君。懐かしみたいところだが今はただでさえ強面なのに険しい表情で咎めてきた。
「フガク君…ああ、わかってる」
わかってるよ。俺の殺気くらいじゃ意味がないってことくらい。
それでもサクモ君は俺の大切な友達なんだ。こんなことってないよ。誰よりも仲間を大切にしていた彼が仲間に非難されるなんて、と。屹度泣くに泣けないんだろうカカシ君より先に俺の方が耐え切れずグズグズとみっともなく泣いてしまった。
「ほら、これを使え」
差し出されるハンカチで顔を隠す。鼻水出てきたけど借り物で鼻なんてかめない!バレナイように少しずつ鼻を啜るために広げたハンカチで見えないようにする。よし。もう大丈夫かな。
ハンカチで涙を拭き取り顔を上げればそこには誰もいなかった。あれ?カカシ君とオレ以外いないよ?
まさか置いて行かれた?!
ショックで硬直しているとカカシ君が近寄ってきて口を開く。
「……とう、さん、は…間違って、たの?ルールや掟、より仲間を選んだ父さん、は、」
その絶望の底にいるようで、俺に向ける眼差しの中に微かに宿っている縋るような色に俺は思わず口を動かした。
「…少なくとも俺はお前のお父さんの『仲間を優先する』って信念で助けられた。あの人が間違っていたなら、俺はそれ以下の人間だ」
慰めになるかもわからないが、俺はその日ずっとカカシを抱きしめて頭を撫で、隣に居続けた。