ミナト視点
僕、改め、俺の兄さんが戦場から帰ってきた。
里にいる間、兄さんの活躍は当然俺の耳にも入ってくる。
(悔しいな…)
まだアカデミーに入学していない俺と10歳で上忍にまで登りつめた兄さんでは、比較してもしょうがないと解っていても、そう思ってしまう。
『赤の悪魔』なんて、本当の兄さんには似合わないのに…。
皆、兄さんの活躍を聞き、持て囃してるけど、いざ兄さんを前にすると緊張しているのか、妙な態度をとる。それを怪訝そうな、だけど悲しそうな顔で見つめる兄さんの後ろ姿に、たまらず声を掛けた。
「兄さん!」
「・・・ッ、ミナト」
あ、思わずチャクラダッシュしちゃった。でも流石兄さん!しっかりと俺を受け止めてくれた。
「兄さん。今帰り?」
――…一緒に帰ろう?と誘うと同時にこちらを羨ましそうに見つめる周囲に牽制する。
これは俺の兄さんだよ。
「……ああ」
そんな俺の浅ましい感情に気づかない、いや、気付いていても気にしないのか、兄さんは何も言わない。だけど俺が大好きな優しい笑顔を向けられ、不意打ちだと、顔が赤くなるのを誤魔化しながら手を握った。そんな俺を不思議そうにコテンと首を傾げてみる兄さんが可愛い。
何だこの生き物は!
握った手は、俺のよりも大きくて、でも組んだ指は傷だらけでちょっとかさついている。
本日の兄さん観察をしていると突然、浮遊感。兄さんに抱き上げられた。
「うわぁ!に、にいさん!」
戸惑う俺の様子が、よほど可笑しかったのか、兄さんはクスクス哂った。ちょっと、駄目だよ兄さんこんなところでそんな顔見せたら!
ああほら、俺たちを見ていた周囲の人間が顔を赤らめた。
兄さんの前でザッと左右に割れた人の前を、俺を抱きしめたまま颯爽と歩む兄さんがかっこよくて始終赤面していたことは言うまでもない。