主人公視点
戦場から帰って来て早々泣きそうです。
「あ、あの、ユウさま!」
そう、これ。凄いびくつきながら話しかけてくる里人の態度。
しかも大して偉くない俺に敬称つけて、なに?苛め?苛め良くないよ?
「………」
俺が無言でいると何故か「ごめんなさーい」と立ち去るしさ。やっぱり苛めだ。ダンゾウ先生に訴えてやる!でも「そんなくだらんことで儂の所にくるなー!」って怒られるかもしれない。他に相談するには……あり?俺って相談できるほど仲良い友達いなくない?
この間知り合ったあの伝説の三忍(まだそう呼ばれていなかったけど)にも、相談できるほど親交深めてないし。
いや、だって自来也とか綱手とか、すげー胡散臭そうな目で俺のこと見てくるもん。あれか、ヘタレだってばれてるのか?逆に息をハァハァ乱してジリジリ近づいてくる大蛇丸に俺の第六感が「逃げろ!」と悲鳴を上げたので、親交なくても仕方がない。
フガク君だってこういう相談向いてないし。ヒカゲ君は鈍感だし。
チクチク突き刺さる視線に息を吐く。帰路に着こうとすると道が割れた。俺ってなんなの?
そんな時、
「兄さん――!」
聞きなれた聲と共に身体に奔る衝撃。うっ。
「・・・ッ、ミナト」
・・・一瞬、お兄ちゃん天国の扉が見えた気がする。チャクラダッシュで飛びつくなんて流石ミナト。お兄ちゃんにその才能を分けてくれ。
「兄さん。今帰り?」
――…一緒に帰ろう?
振り向いた先で満面の笑みを浮かべる天使。うわ、眩しすぎる。
「あ、ああ」
生返事になったが気にしてないのか、ミナトは俺の手を取って歩き出した。
流石にコンパスの違いがあるため、若干ミナトの歩調に合わせるのは辛い。だがこのままではミナトに気づかれ、俺との成長の差に不満げに頬を餅みたいに膨らませるだろう。
それはそれで可愛いが、弟のプライドを傷つけないように、お兄ちゃんはミナトの両脇に手を差し込み、抱き上げた。
「うわぁ!に、にいさん!」
あわわわと林檎みたいな真っ赤な顔で慌てて抗議するが、お兄ちゃん聞きません。
ルンルン気分でミナトを盾に、人が割れた道をとっとと過ぎ去ることにする。