三忍視点






「はじめまして、波風ユウです」


 こちらを見定めるような鋭い双眸に息を呑んだ。最初に我に返った自来也が豪快に笑いながら調子に乗って歌舞伎役者のような派手な挨拶をするなか、ほんとに10歳の餓鬼かと疑うような眼差しを向ける綱手と、クツクツと咽を鳴らす大蛇丸は、噂には聞いていたが、波風家の嫡子に、噂以上だと確信した。


白皙の美貌は子どもとは思えないほど、静か――。
その空間を彼が支配しているといっても過言ではない。


珊瑚色の髪を後ろで縛り、服の上からでも分かる鍛え抜かれた肉体はすでに一人前の忍のそれだ。巨体からは考えられない、風を切る様な速攻に、すれ違う敵は何があったのか分からないうちに死滅する。

彼が通ったそこには屍しか残らない、そう、まさに……


「フフ、流石『赤い悪魔』と呼ばれるだけあるわね」
愉快そうに哂う大蛇丸はその姿に舌なめずりした。

「あの歳でもう血に染まっているのか」
うちの弟と対して歳が変わらないというのに、と。悲観する綱手の肩に自来也の手が乗る。

「そうさせるだけの力が、アヤツは持って生まれてしまったんだろうのぉ」
同じ年頃、天才と云われた大蛇丸すら越える才能を発揮している子どもに、何ともいえない苦い感情を抱く。戦争に巻き込まないように身体を張る自分たちと肩を並べるのが、本来守られるべき子どもだという。いや、寧ろ自来也たちすら守ってしまいそうな勢いだ。



切って、切って、斬り殺して。
空間を揺さぶる振動を感じたら、それは赤い悪魔が近くにいる証拠だと広まるほど、波風ユウは活躍した。そして人を殺した。


 ダンゾウのお気に入り。
 そのあまりの才能に、人々は畏れた。師匠が三代目なら、ここまでの恐怖を抱かせなかっただろうが、彼の師は色々と黒い噂が絶えないダンゾウだ。里をまもることにおいては信頼できても、里の権力争いに興味がないとは言い難い。
味方としてこの上なく頼もしいと同時に、何時か敵対するかもしれないという疑心暗鬼に、自来也たちはユウとの間に見えない、だが決して壊すことのできない透明な壁を創ってしまった。

そして後にそれを酷く後悔することになる。




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