アカデミー教員視点





アカデミー教員視点


 俺はとある生徒の保護者と三代目さまの目の前にいる。その生徒が問題児とかならまだよかった。だが生徒、波風ユウはアカデミー始まって以来の天才だ。

 苦無を飛ばすには力がいる。まだ一年生は苦無の重さもあって的まで飛ばせることすら稀だ。掠りでもしたら十分才能ある。だがユウは俺達でも出来ないことをやってのけた。
的の中心、即ち小さな円に向かって正確に投げられた苦無はそのまま的を突き破って後ろの岩に突き刺さった。木なら兎も角岩に刺さる威力に驚愕していると、続けて打った二本目三本目も一本目に空けた穴を寸分違えずに通過し、岩に刺さる。


波風一族の後継ぎが麒麟児だという噂は聞いていたが、まさかこれほどまでとは……


 だがユウは俺たちの予想を遥かに超えていた。五本の苦無を構え、一斉に放つ。信じられないことに苦無が互いを弾き合い、時間差をつけて全て的を貫通した。子どもとはいえ今の時代は忍びの家系の子どもばかりだ。彼の異質さを感じ取ったのか同級生から畏怖と尊敬の眼差しを向けられながらも、平然としているユウは本物の天才だった。


「彼はもう卒業させた方がよいのではありませんか」

「…ふむ。イカリよ、お主は父親としてどう思う」

「三代目。俺は、息子はもう少しアカデミーにいてほしいと思います」


 飛び級を提案したがその父親の波風上忍に断られ驚いた。普通は喜んで受け入れるはずだ。彼ほどの忍びならユウがすでに他を凌駕する実力を秘めていることなど知っているだろうに。


「その理由は」

「……あの子は屹度中忍、いや、下手をすれば上忍並の実力を持ってます。だけどだからこそ周囲から疎外され、もしかしたらあのうちはマダラのようになってしまうかもしれません。」


「それは…」

「考え過ぎとは言わせませんよ。三代目もこの間あの子が組手で上級生をあしらった手際を見ましたよね」

「うむ。」


 今ではアカデミーの授業の大半を見学してもらっている。そのせいで成績は平均しかつけられないが、あの子を数値で図ることなど俺には出来ない。波風上忍の云った様に、他者に絶望を与えるだけの一方的な実力差は明白だ。まるであのうちはマダラや初代様のように圧倒的な力を持つ人間の、いや、神の領域にあの子は既に足を踏み入れている。


「あの子の力は里にとって必要です。だけど息子は俺や妻やミナトを、家族を、一族を愛してます。あの子がこの里の全てを愛するようになれば、それこそ本当の平和を導く存在になるかもしれません。」

「イカリ、お主の予言か」

「はい。俺は“世界を動かす変革者の父親となる”、大鴉天狗さまの予言に従ってあの子の世界をもっと広げる機会を作りたい。あの子にとって、世界にとっていい方向に進めるためにも今すぐあの子を忍びにしてはいけないんです」



…俺はとても凄い生徒を受け持ったようだ。二人の会話を聞いた以上、俺は教師としてあの子をしっかり向き合おう。



「あい解った。ではヒトデよ、ユウを頼むぞ」

「ん、宜しくお願いします。海野先生」




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