イツキ視点
イツキ視点
ユウ父さんにとっての故郷で俺にとっては別にどうだっていい場所、それがここ、木の葉隠れの里なんだけど……俺は一寸前言撤回する必要があるらしい。
「父さん…可愛いなぁ」
ホォと感嘆の溜息しか出てこない。心なしか頬っぺたも赤い気がする。俺は手元の分厚いアルバムの虜になっていた。
「どうだ、イツキよ。ユウの幼少の時の姿は」
「うん。最高だよ、ダンゾウおじい様」
「そうだろう。だがそれをやることはできんが満足いくまで好きなだけ見ていくといい」
「はーい」
そう、俺は俺の名付け親であり父さんの師匠でお母さん(?)の取引相手であるダンゾウという男を「おじい様」とんでも許されるくらい可愛がられていた。父さんが今うちは一族のために色々と頑張っている間、すっかり拗ねてしまったおじい様のご機嫌取りをしているんだけど、これは思ったよりも大きな収穫だ。
里抜けした父さんの幼少期の写真…そこには俺の知らない父さんが一杯でついつい写真の十枚や二十枚を抜き取ってしまうのも仕方ないよね!
「ちゃんと数も記録してあるし、後で数えるからな…部下が」
っち、ばれてた。
まぁそんなわけで俺は頻繁にダンゾウおじい様のところに遊びに行ったり、父さんの親友の息子のサスケで遊んだりとそれなりに充実した日々を送っている。
おじい様は「うちはなんぞに肩入れしおって!」って不満みたいだけど、俺的には普段見れない父さんが見れるから別にうちはに協力的でもいいかなぁって思ってる。
そういえば母さん(?)もよく「うちはは素晴らしいわ」って言ってたような…大蛇丸母さんが大絶賛していたうちはの天才さんが父さんに絶賛猛アタック中とか知ったら母さんどうするんだろうって疑問には思うけど…俺的にはどっちもいらないかなぁ。
ん、やっぱり父さんは俺だけの父さんでいてくれないとね!
だけどある日俺は聞いてしまった。
「蒼風…か」
父さんは今、俺を見ていない。只今って言ったのにお帰りと返してくれない。
それはサスケを負かしたらしいとある暗部の名を聞いた時から続いている。
ねぇ、どうしてそんな顔するの?
どうしてそんなよく知りもしない奴ばかり考えてるの?
父さんが極秘裏に調べているその暗部の男…サスケ曰く、俺たちと近い歳で、そして
「俺に似た暗部…」
鏡に映る俺の顔は配色こそ父さんと同じだが、顔立ちは故四代目にそっくりだとこの里の人間は口を揃えて云う。父さんの知り合いだったらしい人から聞いた、その四代目火影は父さんにとてもよく可愛がられていたとか。
そして父さんは今、「俺」に「似た」人間に囚われている。そう、「俺」は「四代目」に似ているのだから、それはつまり……
今まで気にもしなかったけど、もしかして俺って、
「死んだ叔父さんの代わり、なのかな…」
そうだとしても俺以外の代わりなんて消えちゃえ。