カカシ&主人公視点





「待って!
俺も用があるんだけど…!」


咄嗟に掴んだ彼の腕がどうなるかも考えずに握りしめた。だけど、あの人は何も言わない。いや、俺が望んだ言葉をくれなかった。

先に口を開いたのは俺に殺気を送っていた後輩。

「俺たちこれから愛を育みに行くんです」

同意を求めるようにあの人に目で問いかけるイタチは本当に幸せそうだった。


「…待て、まだ手は」


手…俺が掴んでいるそれを突き刺さるような視線が捉える。あの人は、ユウさんは何も言わない。それ以上言わなかった。

思わず後退りする。
ユウさんを見て、イタチの勝ち誇ったような顔を見て、もう一度ユウさんを見た。グッと目を瞑り、押し殺したような声で「お幸せに」とだけいって立ち去るだけで精いっぱいだった。



どれくらいだろうか。いつもの、慰霊碑の前で懐古するわけでもなく懺悔するわけでもなく、ただ茫然と時を過ごした。

俺はあの人に追いかけてほしかったのか?いや、そんな資格ないことはとっくに解ってる。元々弟子失格だったけど、仲間やミナト先生を救えなかった俺なんてあの人の中で最上級の屑だ。


イタチ
俺と似ていると騒がれた天才。
だけどお前は俺にないものを持っている。俺が一番欲したものを…。



「カカシ、時間だ」

「……うん、今行くよ」


呼びに来た人物があの人と重なった。


見る者を戦慄させる氷の美貌。風に靡く色は、―-赤ではなく、黄色。




***


イタチと一夜の過ちを犯さないように幻術やら変わり身やら果ては「助けて!ダンゾウ先生」と暗部に逃げ込んだり…俺は兎に角ショタ専門の犯罪者にはならなかったことをここに断言する。

残念そうに、だが頬を赤らめて「つれないとこも素敵」とうっとりするイタチもどうかと思う。フガク君、息子さんの教育間違えてない?

俺は今、フガク君の家で暮らしている。

野宿か大蛇丸さんのとこに寄生していた俺には故郷に実家というものはないしでダンゾウ先生に迷惑をかけすぎるのも不味い。ただでさえ今は「うちは一族消すぞ!」的なやばい雰囲気だから少しでもうちは怖くないよ〜をアピールするためにフガク君宅でお世話になってる。

サスケを暗部入りさせると決めた責任もあるしで、アカデミーから飛んで帰ってくるサスケに修行つけたりダンゾウ先生怖くないよ〜と暗示かけの如く先生とのエピソードを語ったりする日々を送っていた。

夜になると帰宅したイタチが頻りに酒を薦めてくるので丁重に断ったり、帰って来い来い式を飛ばしてくる先生に感動したりと忙しい。


そしてとうとう、サスケの暗部入りが決定した。


「俺頑張るよ!」

サスケ可愛い。身の危険を感じない弟分として安心して可愛がってあげられるから何かあったらすぐにいえよ〜とビビりの俺には珍しく、飛んで駆けつけるからな!と伝える。ありがとう!とニパァアアと光り輝く笑みに俺もつられて微笑んだ。


だが、しかし!


「ユウさーーーーーん!!」


泣きながら帰宅するとは思わなかった。





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