フガク視点





フガク視点


ユウにせめてイタチだけでも連れて行ってくれと頼んだ。
俺は里の忍びで、うちはの棟梁だから…息子にしてやれることは何もない。長として正しく、父親としては最低の決断をする前に、俺の唯一無二の友に頼るしかなかった。

亡き四代目の実兄、九尾の人柱力の伯父、次期暗部の長、何よりも三忍を超えた伝説の忍び


これ以上ない好条件を持つのもこの男だけだろう。
この歳になってまでライバルだと言い張るほど俺も愚かではない。波風ユウ、アイツはとっくにこの世界一の忍者だ。


イタチは天才だが、ユウほどではない。ずっと昔からアイツの背中を見て来た俺には分かる。きっと修業は厳しいものになるだろう。ユウ自身も『ついてこられるか分からんぞ』と不敵に笑っていたが、事実だ。だがずっと自分の数里も先を行く忍に出会ってこなかった息子だ。寧ろユウを目標に更なる努力をするだろう。

数年前、まだアカデミーにも入っていなかった頃のイタチはたった一度だけ会ったユウの強烈なまでの強者が持つ雰囲気とその絶対的自信を持つ堂々とした姿勢に憧れ、天才と呼ばれるほど努力していたのだから。


ユウの視線が手紙に書いてあったユウの息子に注がれる。自分から逸れたそれにムッとしつつその顔を見て四代目に似ているなと心の中で感想を漏らした。炎のような赤髪はユウと同じだが雰囲気やらユウに対する態度なんか見ていると四代目の生き写しだ。

アカデミーに入りたての頃は美少女と見間違えるくらい綺麗な女顔だったユウも卒業時には精悍な美貌に人は変わるものなんだと不思議に思ったが。


その息子の視線の先には俺のもう一人の息子の姿。
二人の視線が交差したその時、何を感じたんだろうか。まるでかつての俺を見ているようだとサスケの様子に顔が緩む。


サスケはユウの息子からその父親へと目を向け硬直する。…無理もない。
ずっとイタチは「ユウさんみたいになりたい!」と豪語していた。そのイタチに憧れ「兄さんみたいになりたい!」と言い張っていたサスケは必然的に名前しか知らないユウを敵視していた。

無論俺の持つ写真を見せてアイツがどれだけ素晴らしいか語ろうとも思ったが、いずれ本物に会った時の反応見たさに俺は見せなかったことを後悔する。だって、


よくよく見ると、数年来の親友はまたその美貌に磨きをかけていた。


俺と同じく子を持ち、父親となったからだろうか。冷然とした態度の中に親としての慈愛が他の子どもにも余裕と優しさを見せる。
かつて『赤い悪魔』と呼ばれた男とは思えないほどに、ユウは大人の色気と包容力に溢れていた。


イタチのこととか一族のこととかで頭が一杯でそちらに気が付くのが遅れたが、かえってよかったのだろう。これは昨日帰宅するなりイタチが「ユウさんと結婚したいです」と真剣に申し出たのも頷ける。俺もミコトも大賛成で喜んで貰われてこい!と背中を押したが、一人反対していたサスケもあの様子では違う意味で反対しそうだ。


ミコトには席を外してもらったが、帰ってきたら息子二人がユウを取り合って修羅場になりそうだと伝えるべきだろう。


そんなことを考えられるまで心に余裕が出来たのも全てはユウの御蔭か。ユウは何か考えるように顎に手をやり、一つ頷くと、


「サスケを暗部に入れたらどうだ」と提案した。





prev  next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -