主人公&イツキ視点






「はじめまして!おじい様!」

ニパ!と爽やか且つ愛想を感じ取れるイツキの笑顔にデレッデレのダンゾウ先生が…ああ、フガク君が見たら気絶しそうな光景だ。

「よく来たなユウ、イツキ」

そして先生は孫を溺愛するお爺ちゃん宜しく俺と同じ赤髪をよしよしする。更に破顔する息子と微かに口端が上がっている先生には違和感しかない。

しかもその手にはいつの間にかお小遣いが握られている。我が子ながらさっそく先生に取り入ったか…悪い所ばかり似たなぁ。

そんなこと思っていた俺に先生の細められて何色かはっきり分からん目が向けられた気がした。


「最近どうだ…何かあったか?」


うっ!
唐突に訊ねられた鋭い問いに俺は動揺する。だって!大蛇丸さんの所に入り浸っていたせいで俺は全く、そう、全く他国の情報収集をしていないからだ!

その癖俺は未だに先生から生活必需品やらなんやら買ってもらっている。これはヤバい。いくら俺には優しいダンゾウ先生でももう我慢の限界ってことなの?今までは大目に見てきたが今度ばかりは…てこと?


俺は曖昧に微笑みながらまたまたいつの間にか先生の膝の上で(さっき暗部の子にもらった)ジュースを美味しそうに飲んでいる我が子に目を向ける。いや、仮面してるから向こうからは見えないけどこう、テレパシー的な感じも送ってるから。

『助けて!』と。


え?息子に助けを求めるな?いやいや、あの子はとっくに、俺を超えてるよ…。


なーんてね。ゴホン、イツキィィイイイイ!パパを助けてえええええええ!!

この思いが届いたのか、イツキはニッコリ微笑んで何やら先生に耳打ちした。ううっ、ハラハラする。落ち着くために俺も貰ったお茶をズズっと飲み干した。



***


イツキ視点

ああ、今日も父さんはカッコイイなぁ。
生まれ故郷だというのに一切気を抜かないその雰囲気はまるで研ぎ澄まされた刃物のようで……逆いえば心休まらないということであり、父さんにとっての里とは落ちつけない場所なんだろう。

普通は母さん(大蛇丸)の隣に座る方が緊張するし、神経尖らせそうなのにね。寧ろ父さんは母さんの膝を枕にスヤスヤと眠ってるのを何度か見たことがある。カブトに訊いたらそれでも浅くしか眠れてないって。流石父さんだなぁ。

仮面で顔の半分を隠しているけど口許が小さく緩んでいるのはこの『おじい様』の前だからだろうか。前に母さんたちが云ってたけど、父さんはおじい様のお気に入りで、父さんがうち(音隠れの里)にいるから色々と援助してくれるし取引も応じてくれるんだって。


愛息子と孫が帰ってきたと小さくだけど、すぐ近くに居た俺には聞こえたそれについ顔を緩ませる。


「最近どうだ…何かあったか?」

ダンゾウおじい様がそう父さんに問いかけた。それに父さんは…うっ!そ、その顔は反則だよ!
へなへなと身体の力が抜けていく。滅多に見られない父さんの笑顔の威力は凄い。これであの面を外していたらきっと気絶すると思う。


ちょうどおじい様の膝の上にいた御蔭で力の抜けた俺を支えてくれる皺皺の片腕。もう片方は包帯が巻いてあるんだけど何だか嫌なものを感じてつい身を引いてしまう。何かそこにとても恐ろしいものがあるような気配がして、俺は眉を寄せる。

そんな俺の僅かな変化にも気づいたんだろう。父さんがこちらに顔を向けて大丈夫だ、俺がついているって言ってる気がした。そして俺はもう一つの父さんの意図に気が付き、ハッと目を開くとニッコリ微笑んで頷いた。


そう、いくらここはおじい様の息の根がかかった者しかいないとはいえ、全員に極秘情報を教える必要はない。教えるべき人間と教えなくてもいい人間。支持を出さないといけない人には伝えるべきだけど、支持を出される側の人間は知らなくてもいいことって結構あるよね。

屹度最初から全部わかっていたんだろう。昨日里入りする前に父さんから手渡された巻物の中身を思いだし、そっとおじい様に耳打ちする。満足そうに微笑むおじい様。


俺は貰ったジュースに口をつけた。



***

補足
イツキが読んだ巻物はカブトがこっそり入れて置いたもの。見覚えがないそれを息子のだと勘違いした明時主が渡しただけ。カブトも「大蛇丸様に毎日引っ付かれて情報収集出来なかっただろうしこれでもいれとくか」的な感じ。寧ろ大蛇丸の機嫌がいいから情報は僕が変わりに仕入れときます精神になってる。




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