イツキ視点



イツキ視点


大好きで尊敬している父さん。
俺よりも鮮やかな赤い髪にキリッとした目は深い青色。全体的に整った顔は一見怖い印象を与えるがちょっと微笑むだけど艶美な印象に早変わり。風呂上りの父さんとかもうエロイ。

父さんは故郷から半ば追放される形で出たってカブトから聞いたけど、もしかしたら父さんの色気で里人が可笑しくなったから追放されたのかもしれない。カブトは呆れた顔をしてたけど、認めたくないけど一応母さん…に、当たる大蛇丸は「そうかもしれないわね。ウフフフフフフフフフ」と不気味な顔と気持ち悪い声でそう哂った。


まあ日々母さんと父さんの取り合いを繰り広げては負けていた俺は死にもの狂いで強さを求めていたが、流石父さん。よく俺に無茶するな、たまには息抜きをしようと優しい心遣いをしてくれていただけあって、俺のために一時帰郷することにしてくれた!

勿論母さんはお留守番だ。だって美しすぎることが罪なだけの善良な父さんと違って最低最悪の外道で抜け忍+国際指名手配中の母さんが里に帰れるわけない。


まああの人の事だから誰かの顔なり身体なり奪って里まで付いてきそうだったことは否定できない。だから父さんは俺にだけ分かるようにメッセージをくれた。木の葉に行く、その言葉から始まった巻物には俺には読めないことが描かれていたが、恐らくダミーだろう。最初の一文、それこそが俺への伝言。


その証拠に母さんにはその巻物は一切見せなかった。俺には見たか?とこっそり確認して「ならいい」と素早く立ち去ったから確かだ。


当日、俺は影分身を二体作り、一体は父さんに変化させもう一体に抱き付かせた。これでいつもの微笑ましい親子のふれあいだ。

本体の俺は小人サイズに変化して父さんの着物にこっそり潜んだ。父さんの匂いとか逞しい体とかにほけ〜としていると「イツキ」と呼ばれる。渋々元のサイズに戻った父さんは何故か驚いていたが気のせいだろう。


父さんのお願いで水汲みに行った俺は戻ってきてその場の惨事に吃驚した。



「はぁ、はぁ・・・・」

「…うう、くそっ!」

珍しいことに息を乱す父さん。汗が滴っている姿もエロカッコイイ。思わず見惚れていると全身傷だらけの男は、固い地面を何度も殴っている。悔しげに父さんを睨みつける瞳の奥には、焦がれる様な激情が籠められているようでイラッとした。


そんな俺に父さんは一瞥するが何も言ってくれない。

立ち上がった父さんはその顔に古傷がある男の前で跪いて


「なぁ、オビト。知ってるか?
この世界は残酷だ、残酷で、だけど泣きたくなるほど美しい。
俺たちはその中でも特に最悪な場所で生きている忍びという存在だ。理不尽なこともある、大切な人だって守れない、そしてその人を奪った人間が、世界が許せないって思うこともある。
だけどな、本当に許せないのは世界じゃない、俺たち自身だ!」


そっと、オビトと呼んだ男を抱きしめた父さんは、父さんだけど俺の知っているただ強くて美しいだけの父さんじゃない気がした。

俺が知らない父さんがそこにいる。
男の隣に俺より少し年上だけど老け顔の少年が近づいて、父さんに泣きついた。
それを頭を撫で、優しい眼差しで二人を見据える姿。


父さんがどんな風に生きて来たのか、俺は知らない。
だけど今日の父さんを見て、俺は――――…



***

補足
主人公が書いた巻物はフランス語で誰に媚を売るべきかと考察したもの。当然暗号化していても大蛇丸には見せられないから隠す。息子主にはまぁお互いイレギュラーだし何だかんだで息子だからで甘い→そこを勘違いされる。




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