主人公視点
スクスクどころかムクムクと成長していったイツキに、『お前はどこのかぐや姫だ!』と叫ぶ自分が半分、もう半分は『流石大蛇丸さんの子…』と納得している。
だけど“かぐや姫”という言葉に、自分で考えていて何だが大蛇丸さんがあのカグヤの遺伝子を組み込んでいるなんて…ないよね?ね?
ある日を境にピタリと止まった成長は大体故郷に残してきた甥っ子くらいの年頃。遺伝子上の親である俺や大蛇丸さんではなくイケメン王子様系と名高い弟にそっくりなチビミナト(ただし赤髪)の我が子は可愛い。昔のミナトとは違った意味で可愛いが、ミナトと違って少々…いや、かなりの冒険家だ。危ない橋は叩いて念入れに確認した挙句渡らない俺と違って見るからにヤバそうなそれを平然と渡りきる息子である。
「だから何度もいったでしょう!俺とあの人の服を一緒に洗わないでよ!」
大蛇丸さんのタオルを汚物でも掴むようにゴム手袋をつけるイツキはそういった。
因みにそれは昨日下ろしたてでまだ一回しか使ってない。
「諦めておくれ。節約に協力してくれないかなイツキ君」
眼鏡をクイッとあげてカブトがそういった。
このあの人が俺なら納得できるが、
「寧ろ父さんと一緒に洗ってよ!」
「でたよファザコン」
鈍感で愚図な俺でもカブトの言ったことが本当だって分かる。
イツキ、お前ファザコンなんだな。毎晩俺のベッドの左側に侵入するお前をみて死んだ魚の目をした俺、悪くない。
「それにお母さんを『あの人』なんて他人行儀な呼び方してたらその内呪われるよ」
あ、確かに怒られるより呪うほうがあってる。毎晩俺のベッドの右側に侵入して「よくも夫婦の時間を邪魔したわね」とかブツブツと呪詛?を吐き出し続ける大蛇丸さんにすっかり慣れてしまった俺はもう普通の人間ではいられないのだろうか、いやまだ大丈夫だ。
息子は可愛い。
何だかんだで大蛇丸さんはいい人?だ…多分。
カブトは…家政婦は見た!みたいなことをやって俺たちで遊んでるから嫌いだ!
でも俺は知っている。大蛇丸さんはそのうちNARUTOの原作一部のラスボスとして登場することを。
ダンゾウ先生と裏で繋がって木の葉崩しをやったらしいから俺がこのままここでお世話になっていても先生に怒られることはないと思いたいが不安である。
ああ、俺は果てしてこのままでいいのだろうか。
今のうちに何らかの手を打っておかないと快適なニート生活が壊れる気がする。
その時俺は懐に常備していた巻物の変化に気づいた。何らかの術が施されているようで連絡用の巻物は受信すると熱くなる。つまりフガク君から何か連絡が届いたらしい。俺は何気なくそれを開いた。