「明、今日こそ俺のプロポーズを受けてほしい」


俺は本気だ、そういってまたまた私の手を握ってきます。お兄さんは手を握るのが好きなんでしょうか?今度聞いてみましょうか。また前回来たときから三日たってます。これでお兄さんと出会って6日目です。6日で本気だと言われても・・・。

常連のお姉さんたちが見ていた木の葉ゼクシィに載っていたような高そうな指輪とチューリップをくれました。どうしましょう、欲しい。けど屹度どちらも高価です。私みたいな子どもが貰っていいものではありません。でも私も女の子ですからこういうのに憧れたことがないとは言い切れません。


困惑している私を余所に、お兄さんは紐(あとでお母さんに聞いたら「プラチナ」だそうです)に通して指輪を私の首から下げてくれました。
お兄さんは「ちゃんと給料三か月分だ」とかいって笑っています。どのくらい高いのか分かりません。後婚約を承諾した覚えもありません。


ムリですと断りました。首から指輪も外そうとしましたがお兄さんの手がそれを止めます。あ、私の手が片方空きました。


「俺の全てを賭けてお前を幸せにすると誓う。もしもこの先、たった一度でもお前が不幸だと感じたならばその時は俺のこの両目をくり抜いてお前に捧げよう」


あ、この人本気だ。目がまた真っ赤です。うちの案山子が餌を獲物を狙うときとおんなじ目をしています。本能的にここで首を横に振るとお父さんがこっそり読んでいる本のお姉さんみたいにお部屋に監禁されそうです。勢いに負けて、縦に小さく頷いてしまいました。


「16歳になったらすぐに挙式をあげよう。まだ8年あるが・・・ふ、今のうちにお前に似合うウエディングドレスと白無垢を特注しておこうか。式場も予約しておく」


ちゅっという音が静まり返っていた店内に響きました。
忘れていました、お兄さん、ここは私の家の店です。頼みの綱のお母さんは今日も「一寸絞めてくるわね!」ととてもいい顔で意気揚々と出ていったので、いるのはお父さんと他のお客さんだけです。


明、8歳、ファーストキスを奪われました。



***

補足2:
ペットの案山子。ホワイトタイガー(オス)。主人公に懐いている。元々お母さんが子どもの案山子を拾ってきてヤンキー時代に跨っていた。人は食べないがよく噛む。イタチのことはかみ殺すと誓っている。


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