7歳である。名前は上月でもなく明である。ただし苗字はうちはではなくはたけだ。 「お兄ちゃん、起きて」 朝からがっしり私を抱き枕にしている兄ことはたけカカシさん、あの日から私の家族になってくれた人だ。 「う〜ん、まだもう少しこーしてよーよ」 グイグイ顔を私のまな板な胸に埋めてくる。セクハラ!って叫んでやろうかと思いつつ、それならこの兄の愛読書とそれを人前で読んでいることを考えればあまり効果は期待できないだろう。寧ろ調子に乗ってもっとしてくる気がする。はたけカカシはドSなのだ。 「ダメ。お腹空いた」 「……しょーがないな。おはよう明」 起き上がったカカシさんは当然のようにマスクを外している。顔面凶器ともいえる美顔が目の前に迫ってくるのはいつまでたっても慣れない。 「うん。おはよ」 にっこり笑って額、頬、目元、鼻、口端と順に口唇を落としてきた。うん、恥ずかしい。 「今日も可愛いよ」 「う、は、は、」 毎朝繰り返されるやり取りだけど、恥ずかしさのあまり私は大好きだったゲームのあの言葉を口にする。 「破廉恥ィィィィ!!!」 *** カカシ視点 うちは明、暗部名上月。今は火影直属の暗部だけど、その前はあのダンゾウ様の下にいた。といっても明もテンゾウと同じように被害者といっていい。三歳の頃に誘拐されたのだ。テンゾウは大蛇丸の木遁実験だったが明は生まれ持ったチャクラ量と瞳力から。 うちは一族が持つ『写輪眼』の中でも嘗てあのうちはマダラが開眼したという『万華鏡写輪眼』を開眼しているという大きな力を持って生まれてしまったのだ。 明は大人しい。だが一般的な子どもらしくないし、甘えたい盛りに誘拐され常に命の危機に瀕していたから精神的に脆い。それに口には出さないが寂しがり屋だ。前に俺の帰りが遅くなった日はずっと寝ないで待っていたのだろう、だけど我慢できなかったのかリビングのソファでぬいぐるみ(明が気に入っている眼帯うさちゃん)を抱きしめて寝ていた。 「ほんと、かわいーよね」 緩くウェーブがかった黒髪に起きているときはパッチリ開いた大きな瞳。桃色の唇からスヤスヤと息音が聞こえ小さな胸が上下する姿に生きているのが解る。 暗部という仕事に身を置いていると、嫌でも生死というものに敏感になる。強すぎる力を抑えるため施された封印術で寝込みがちな明は暗部とはいえ、普段は三代目と一緒にお茶をするだけ。羨ましいとなんど叫びかけたことか・・・。 引き取った経緯はどうであれ、今の俺は明を元の家族にも返したくない。ずっと俺の家にいればいいと思う。 だからさ、俺からあの子をとらないで欲しいんだ。 ね、うちはイタチ君。 3 |