「遅いのぉ……全く、なにやってるのだあの馬鹿共は!!」 「………煩いぞ、ジジイ」 「承太郎!お前だって早く明達に来るように電話の一本くらいかけんか!」 「……」 「(どいつもこいつも)」 中々助けに来ない白く小さな友人にジョセフは毒づく。殆ど無言を貫く承太郎だが、彼はジョセフ以上に内心で深く、激しく、永遠と明を求める強い感情が爆発していた。 少し昔話をしよう。 空条承太郎は幼い時から彼の祖父に犬猫のように(無理矢理)ゲージに入れられてやってくるトトロが好きだった。祖父の友人であるシーザーが一緒のときは、大人しくシーザーの肩にちょこんと座っているが、いざ承太郎の前に来るとトトロの明はその綿あめのようなフワフワの身体を承太郎の手の中に納めた。 承太郎はよく大事そうに明を両手の平で持ち、柔らかな体毛に幼子特有のモチモチのほっぺを押し付けては周囲を和ませた。 現在、承太郎はその辺の男なんてなよなよした貧弱なもやし男に思えるほど、屈強な体躯を持つ男の中の男らしいに成長した。中学生時代はまだ辛うじて残っていた純粋さも高校デビューというのか、「母さんの手料理が食べたいな」から「ウルセェ、くそアマ」やら「こんな不味い飯に金なんて払わねぇーぜ」な不良へと変わり果てている。 (ただしその母親は息子の変化にも戸惑うことも嘆くこともなく、ただいつも嬉しそうにニコニコと到底高校生の息子がいるとは思えない若々しい笑みを浮かべるだけだが) 承太郎は次々と送り込まれるDIOの刺客たちの休む間もない攻撃の嵐を、その冷静さを持ってして難を乗り越えながら明が来るのを誰よりも待ち望んでいたのだ! ところでSPW財団の苦労の賜物か、DIO討伐に出かけた承太郎一行の助っ人として呼びかけてから一か月後、漸く明にホリィのこと、DIOの刺客のこと、空路が使えず難儀しているジョセフたちのことが伝わった。 「フン!ジョジョなら吸血鬼の一匹や二匹、どうとでもなる」 え〜メンドクサ。アイツまだ生きてたの?うわぁ、しぶとッ!と行く気零な明の気持ちを代弁するように、最初にそう云ったのはカーズだった。 カーズはサンバカーニバルで使用した衣装が殊の外お気に召したのか、祭りが終わった後も普段着として着用している。色合いも派手なそれで先日スーパーまで買い出しに行った際、地元警察のお世話になったが、カーズは全く気にしていない(ただし彼ら柱の一族は常時褌一枚にターバンのようなものを頭に巻いているだけなので露出度は減ったかもしれない)。 カーズに同意するようにワムウも口を開いた。因みに彼の身に纏っている衣装もカーズと色違いで飾りが若干少ないが、十分派手である。 「そうだ。このワムウに勝利したジョジョなら負けるはずがない」 科白とは裏腹にいっそそのまま共倒れになってしまえと願うカーズとは逆に、ワムウの瞳にはジョジョ…嘗て一度自分を倒したジョセフ・ジョースターへの熱い信頼が宿っている。 残りの中正派な二人の柱の男、エシディシとサンタナも真意こそ読み取れないが、首を上下に振って賛同する。 彼らの反応を見て明は覚悟を決めた。 「(ならここは敢えて何もしません!)」 ジョセフと承太郎の心、明には届かず。 仔承太郎 |