吾輩はトトロである。名前はある、明である。

この世界、どうやら漫画の世界らしかった。それも妹が「リゾットさん愛してますぅぅぅぅ!!」とか近所迷惑に家の中でシャウトしていた奇妙な世界らしい。
何故わかったかというと、これまた妹が関係するのだが「見てみて姉さん!DVD買ったら石仮面Tシャツついてきた!」嬉々と語るその手が握る布にプリントされた仮面が今私がお世話になっている屋敷に飾ってあるからだ。ちなみにそのことに気づいたのはトトロになって20年以上経てからである。

こんなお城みたいなお屋敷に住んでみたかったんだ〜と真っ黒くろすけ君みたいに貴族の御屋敷に勝手に住むことにした。それには我が友人ジョージ君が関係している。
どうやら本気でトトロ化してしまったらしく、メイちゃんの代わりに外国人の少年が嬉々と追いかけてくる追いかけてくる。

ちょっと高さがあるが隠れられそうな場所を見つけ、この姿では届かないと思った瞬間ポン!と軽快な音と共に中トトロに変化していた。まじでか。
後ろから足音が聞こえる。考えている時間はないのでよじ登る。如何やら通路のようで奥へ奥へと走った・・・しかし敵はメイちゃんよりも賢かったらしい。

「捕まえたよ!!」


天使の顔が悪魔の様に見えた。



それから私は自分について調べてみた。どうやらこの世界、トトロに関する認識は19世紀のイギリスの癖に21世紀の日本人と同じようだ。つまりトトロを知っているが信じてはいない。
そのためか、私の姿が見えたのはジョージ君のように純粋な子どもだけらしい。赤ん坊には勿論2、3歳くらいなら追っかけてきた。逆に10歳くらいで見えるのは今の所ジョージ君だけだ、みんな純粋さを捨ててしまったのか。だが屹度前世の私にもきっと見えなかっただろうからこの場合ジョージ君がレアなんだろう。

ジョージ君の勧めでジョースター邸に居候中。だが快適な生活も危惧していたことが問題が生じた。

「明!!!!」

「ジョージ!お前たち早く連れていきなさい!」

「はい旦那様」

「嫌だ離して!」


姿の見えない友達なんて周囲からしたら異常だ。私が彼らの鼻先でタップダンスを踊っても見えるのは笑いを堪えているジョージ君だけ。貿易業を営みジョースター家の後継ぎとして留学させられることになったジョージ君とお別れも謂えなかった。ごめんよ君が帰ってきたとき謝ろう。

それまで私は大人しく近くの森でトトロ化している。
中になれたんなら大にもなれるはずだ。予想した通り大トトロになれた。でけえ。
指でお腹を突いてみたがプニってした。女の子なら気になるけどメスだからね、ていうかトトロ(オス)っているの?


森に住みついたら小鳥さんやリスさんが貢物(木の実)をくれるからやったぜ動かなくていい。大トトロのままゴロンゴロン(寝返りをうつ度に地面が揺れるのも気にせぬ)転がり、さあもうひと眠りしようと何度目か分からない二度寝を繰り返せば腹部に小さな衝撃を喰らった。何事?

それにこれは・・・と、懐かしい気配を感じた。
ゆっくり目を開ける。そこにはジョージ君にそっくりな子どもが瞳を輝かせていた。


「きみ、だぁれ?ぼくはじょなさん!じょじょってよんで!!」


ジョジョ?ああ、ジョージ君と同じだね。私は・・・面倒だ。某水を被ると変身する漫画のパンダ君のように用意してあったプラカードの『トトロ』と書いてあるものを掲げた。


「・・と・・とろ?トトロ!!?うわぁぁ、ぼく、はじめてあうよ!こんにちは!!」


まあ私みたいなのが一杯いるのもおかしな話だ。しかし眠い。さっき二度寝すると決めたしね。
目の前にいるのは美少年でもまだ美形ではない。恥じらいもなく大口を開けて欠伸を洩らして寝た。


目覚めた時、お腹の上にまだ寝ている少年を見覚えのある屋敷に返した際玄関ホールで石仮面をみたことでこの世界を理解したのである。が、生憎私には原作知識なんて一頁も存在しない。
翌日から毎日森に遊びに来るジョナサンの押しに負けて再びあの屋敷に住むことになったのである。



ジョナサンと
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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