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泣き方一つも似てないなんて

鳥居様リクエスト


人魚石主IF マダラ娘


***




どうしよう


「ほら見て、兄さんと似てなくて可愛い!!」

「悪かったな仏頂面で・・・にしても小さいな」


どうしよう・・・


「あ、目開いてる」

「あんなにでかくて大丈夫か?大事な目が顔から零れるんじゃないのか?」


どうしようミルキ、


「そんな心配杞憂だよ。ってか兄さん俺や他の兄さんたちの時も赤ん坊は見たんでしょう?」

「図太いお前たちと違ってアイツは女子なんだぞ。一緒にするな」


どうしようヒソヒソ


「それこそ大丈夫だよ。だって兄さんの娘だもん。繊細な俺より屹度須佐能乎レベルの強度のハートに決まってるよ」

「おい」


私、うちはマダラの娘に生まれたみたいです。




 ***



月日は瞬く間に過ぎ去り・・・ってくれればいいのだが、残念なことに生まれて半年しか経っていない。出産後一週間もすれば今生のママも仕事に復帰したようだが、残念ながら前世のヒステリックなママとは違い私を生んで二か月で帰らぬ人となった。

そのことを別段悲しみに浸った表情でもなく淡々と義務報告のように伝えた今生の父親は前のシルバ父さんよりも子どもに愛情がないんだなぁと思えたあの日に帰りたい。


何があった、今では冒頭のように年若い叔父(といっても父も十分若いが)と共に赤ん坊の部屋に入り浸るマダラ、そう、あのうちはマダラだ。NARUTOという漫画においてラスボス的存在且つ無敵なチート野郎。やべぇよ、ナルトはこんなのに勝てんの?とかミルキと謂っていた記憶を思い出す。


それが現在、娘(=私)にベタ甘なシングルファザーだ。



こうなった切っ掛けは恐らく生まれて三か月、母が死んで一か月後のことだ。
外が大雨ですることもなく天井の汚れをじ〜と見つめていると音もなく侵入してきた幽霊に吃驚した。しんとした室内に唯一広がるのはポタポタと滴が垂れる音のみ。


「お前は・・・」


伸ばされた手、というかこのちみっこい手では掴めたのはその中で一番先に届くだろう中指。ギュッと反射的に掴んだことで、幽霊じゃないことが分かった。そもそもこの低い美声はマダラだ。どうした、濡れ鼠みたいだね。

屹度私が赤ちゃんじゃなかったらそう口にしていただろう。でも口から出たのは喃語だ。

あ〜だのう〜だの、意味が分からない。
マダラも何を言っているんだ?と小さく笑って・・・笑って?


あ、あのマダラが笑ってる〜〜〜?!!
アニメで見たあの悪そうな笑みと重なるよ!怖いよ!離そうにも手先は不器用らしく中々離れない。ブンブン振り回してやっと取れるか?といった具合だ。


はーなーれーろ〜〜〜

ブンブン、ブンブン。上下左右に振る。
だがしかし、


「ああ、そうだな。大丈夫だ、お前のことはこのマダラが守ってやる」


振り払おうと思った手を逆に巨大な手によって囚われた。


一つ聞こう、何があった?どういう心境の変化ですか・・・





マダラSIDE



 娘が生まれた。息子なら兎も角生まれたのが女と分かった一族の落胆は明らかだ。頭領の子なら矢張り後継ぎが望まれていたらしい。女でも使えんことはないだろうが、生憎生まれた子は身体も丈夫ではない。形式上の妻に労りの言葉を投げかけたが、それも戦後の仲間にするのと同じように感じた。


そして出産後、娘の世話は乳母に任せ妻は殉職した。そのことを部下に聞いた直後に一応伝えておくかと数週間ぶりに訪れた赤子に淡々と告げ、次の戦に向けて準備をすべく部屋を後にした。じっとこちらを見つめる黒曜から逃げるように。


その一か月後、戦が終わった。暫くは大丈夫だろう。
じじい共が死んだ嫁の代わりにと新しい妻を奨めてくる日々に死んでいった仲間を悼む暇もない。
疲れた・・・暫く雨に打たれていると、心配したイズナが迎えに来て娘に会えという。

気が進まない。だが五人兄弟だった俺に残された家族はイズナと、その娘だ。
そういえば娘をよく見たのは生まれたばかりの皺くちゃな猿の時くらいで、それ以降よく見ていない。一か月前だってそうだ。子供の成長が早いことはイズナで知っている。

娘は誰に似たのだろうか、俺か?あの女か?
イズナや死んでいった兄弟に似ればいいのに・・・


渡されたタオルで碌に拭かず、びしょ濡れで部屋を訪れる。
中の気配は一つ。乳母はいないようだ。

音も立てず中に入れば驚いたことに赤子は起きていた。そして俺に気づいた、気配を消していたにもかかわらずだ。


「(どうやら忍びとしての才はあるようだな)」

そんな考えもすぐさま吹き飛んだ。
黒曜石がじっと、こちらを見つめている。


不思議と、心が安らんだ・・・


「お前は・・・」


お前は本当に俺の娘なのか?妻にもなかった煌めきが秘められた瞳に吸い込まれそうになる。無意識に伸ばした手が、手と呼べないほど小さいそれに掴まれる。

簡単に振りほどける力だ。なのに何故俺はそれをしない。
放っておくと赤子は俺の手で遊ぶようにブンブン振り回し出した。

それが微笑ましくて俺にも笑みが浮かぶ。

俺の表情に驚いたのか、目を見開いた様子に益々笑みが深まる。


ああ、そうだ。お前は


「ああ、そうだな。大丈夫だ、お前のことはこのマダラが守ってやる」


お前は俺の“守るもの”だ

そうだな、まずは一緒に寝ることから始めるか。

なあ、名前・・・?




その様子を影から見守っていたイズナの提案で食事もマダラ直々に食べさせられることになった名前が内心大絶叫していたとか。





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