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明日、神を殺しに行きます

とくめーデス。様リクエスト

妊娠七か月(ミナト娘でイタチ嫁主が妊娠中に多重トリップしてトリップ先で出産)で進撃時代にイタチが嫁の帰りが遅いと迎えに来た。

※息子の名前はレタスで固定しました。


***


苦無、巻物と十年近く使っているポーチに入れる。
手裏剣も起爆札も暗部刀も鎖も毒も何もかも・・・一族の倉をひっくり返して秘宝も(無断で)持ち出し、ついでにとある伝手から行方不明だった先祖の芭蕉扇も手に入れた。


鎖帷子の上から半袖タイプの忍服を着る。鏡に映るのは二十代とは思えない男の疲れ果てた顔。白髪交じりの灰色の頭にある、細かい傷だらけの額当てを外して台に置いた。


これから行くところは任務じゃない、私情だ。これは要らない。

長い間溜めていた有給休暇を上から分捕り、いつ帰れるか分からない未知の世界に行く。しかし恐怖はなかった

恍惚と眺めるのは、漸く手に入れた時空間忍術の巻物。そして開く時をどれほど待っただろう・・・。
胸元で光るロケットには彼女が消える前に取った写真が収められている。やっと、やっとだ・・・


行方不明になってすぐに探し回ろうとしたが運の悪いことに、あれからはた迷惑な先祖や身内の起こした戦争に駆り出され、折角掴んでいたこの巻物の行方も消えたときの絶望は忘れない。荒れに荒れ、一時融通の利かない里にいるよりは・・・と里抜けを決意してはサスケたちに止められてたな。

まあ件の巻物も所詮は一方通行で一度使えば消滅し戻ってこれる可能性が低いのだから周囲が止める気持ちも分からない訳じゃない。

だがそれ以上にアイツがいない世界ほど虚しいものはない。
始めに色を失い、次第に音を失い、匂いも消えていった・・・


人によってはたった数年というだろう。異世界にいるらしい名前とは時の流れが違うからもっと時差があるかもしれない。
あの日を境に窶れ、老けこんだ顔にも希望の光が差し込んでいるのか常よりも見れるものだ。十近く年上のカカシさんと同世代で通るほど、今までの俺は精神的にも肉体的にも年老いていた。



「今迎えに行くからな・・・名前」


サスケたちが留守の今しかない。
周囲が必死に止めていたのは何も片道切符だからじゃない。行きつく先が定まっていないからだ。
確実に名前の下に辿り着く保証はないと・・・


「本気なんだねイタチ」

「お義父さん」

「君にそう呼ばれる筋合いはないよ」


ムスッとした顔が可愛いと感じられるのが不思議なくらいこの人(四代目)は変わっていない。
神出鬼没なのも相変わらず。名前とよく似た顔だから強く出れないことも解っていて俺で遊ぼうとする人だ。


「ん!まぁ休暇をどう使おうが上司だろうと口出し出来ないからね止めないよ。“お義父さん”って呼ぶんなら娘と孫を連れて来てからにしてよね」


素直じゃない激励に小さく笑う。


「勿論・・・」






***



「母さん!母さん!起きるってばよ」

「ん・・・」


揺り起こされ瞳に映るのは最愛の人と瓜二つな愛息子の不機嫌そうな顔。
外を見ると如何やら陽が落ちるまで寝入っていたようだ。いけないいけない。夕飯の下ごしらえは終わっているから仕上げるのは簡単だが、もう少しでも寝ていたら恐らく夕飯の時間に間に合わなかっただろう。

感謝の意味を籠めて頬を撫でれば年頃の少年には珍しく甘んじて受けていた。それにホッとする。もし「うるせーババア!!」なんて口を利かれたらショックで倒れそうだ。


その要因としては主に息子の容姿が関係しているだろう。
もし私に似ていたら必然的に父、レタスにとっての祖父に似た顔で言う分には新鮮でいいかもしれない。しかしレタスはイタチのドッペルゲンガーかと思うほど父親にそっくりだ。性格は私の母に似たからか、「だってばよ」と弟のナルトと同じ口癖になっている時点で違和感しかないのだが、真面目ちゃんだったイタチを知っている分、衝撃も大きい。


イタチとどことなく似ているリヴァイ兄さんと二人でいると本当に笑いが止まらないし。
もしイタチと再会したらもっと可笑しなことになるんだろうなぁ。


「ふふふ。フガクのおじさまも驚くでしょうね」

「なにが?」

「な〜にんも。それより今日はお肉よ」

「ほんと!!?やった!肉だ、肉!エレンたちにも教えてやらないと!」

「教えるも何ももうすぐ食べるんだから」


夕飯にお肉が出ると聞いて喜ぶところも似ていないだろう。イタチときたら“肉”と聞くだけで嫌そうな顔をするのだ。因みにレタスは反対に“キャベツ”が出てきたら同じような顔になる。



いつも以上に息子とイタチがここにいたらを考えたのはこうなることを予感していたからかも知れない。





 ***



その頃、調査兵団の訓練場では何十人もの兵が集まっていたが恐ろしいほどに静まり返っていた。

中心を囲むように立ち竦む兵団員は目の前の現実を受け入れられずフリーズしていた。
巨人の群れを前にしても冷静沈着な団長ですら言葉もない。

中心には二人の男がいる。
片や童顔が多いとされる東洋系の男、片や十代の頃から年上に見られがちな老け顔をここ数年の精神的苦痛により老化を早めただけある男。誰がどう見ても前者の方が若く見えた。

しかしその若く見える方の男はこの兵団、いや、人類最強を謳うリヴァイ兵長が尻餅をついて吃驚しつつ対峙する男を見上げている。
夕暮れ時の陽が逆光してその表情は見えないが本能的に察した。

勝てない・・・と。


腰につけたポーチにでも武器かなにか持っているのだろうことは、リヴァイの過去の経験から容易に予想がついたが男はそれを使わず、素手のみでリヴァイを捻じ伏せた。こちらが立体起動装置を付けているのに、だ。



雷が落ちたかのような閃光にも関わらず周囲になんら変化はない。
ただ衝撃はその現場を見ていた彼らにも伝わった。肌を刺すような空気の揺れに、これが自然現象じゃない、『ナニカ』があると咄嗟にソードを手に取ったリヴァイやミケ、ハンジたち。新米ではミカサがエレンを守るように前に立つ。


ごくりと唾を呑む音だけが聞き取れた。
ゆらりと動いた『ナニカ』は奇妙なお面を被っている。白い動物を現したような面から覗く二つの赤く光る眼に誰かが小さく悲鳴を上げる。


こちらには目もくれず、ただ何かを探すように視線を彷徨わせるのだから囲むようにそこにいた団員は一人残らずその目を見て恐怖した。

逸早く復活した団長が静かに「君は誰だ?」と問いかけたが返事はない。
苛立った兵長が「おい」とドスの利いた声を出すが相手はなにも言わない。


舌打ちしたリヴァイが捕えようと動いたとき、それよりも更に早く相手が動いていた。
本能的に危険を察知したリヴァイがアンカーを噴かせ、三次元の動きを繰り出す。

右へ左へと飛び回るリヴァイを男は顔も動かさず視線だけで追っていた。
追い込むため、飛ばされた刃だけを正確に、そして最小限の動きで躱したのに舌を巻いたがこれならどうだと近距離で蒸気を吹っ掛け視界を奪う。


捕えた、動けないよう足を軽く傷つければ・・・そこでリヴァイは後ろから殺気を感じた。
まさか?!!と驚く暇もなく、地面に落とされる。


ズシャ――ッと砂埃をたてる。二メートル近い高さから突き落とされたにも関わらず幸いにも怪我はない。


「(いや、怪我を負わないよう手加減されただと?この、俺が・・・)おい、お前は・・・っ!!?」


目を見開くリヴァイの視線の先には仮面を外した男の姿。
その両目は禍々しい赤で染まってはいるが全体的にリヴァイのよく知る少年の面影がある。

整ったが、どこか疲れ果てた老僧のような悟った顔立ち。
それのもっと幼い、それでいて愛嬌のある笑みを浮かべ特徴的な語尾で話すリヴァイにとって歳の離れた弟の様な、デカい息子のような少年と酷似した顔立ちだった。


その周りで成り行きを見ていた団員は戦慄した。

――人類最強(兵長)が負けた。自分たちが叶うはずない。
巨人以外で自分たち人類を脅かす存在かもしれないと彼らは怯えている。男の登場の仕方ですでに人間と認識していないのだろう。
出で立ちも彼らにとって奇妙なもので特殊な目の色も恐怖を煽っている要因だ。


リヴァイを倒した男の顔を見て別の可能性に気づいたのは義妹の兄エルヴィンと、名前の事情を知っているミケやハンジくらいだ。畏怖と吃驚、二つに分けられる感情の色を浮かべた彼らを見分けた男は後者の人間に向かって口を開いた。


「『うちは名前』を知っているか?」



***



『うちは名前を知っているか?』

その一言でエルヴィンたちは男の正体を確信した。

代表するようにエルヴィンが答える。
「君は『うちはイタチ』君か?」


イタチはその後エルヴィンと名乗る男に一つ頷き肯定する。
彼は今どうしようもなく歓喜していた。

見知らぬ土地、見知らぬ人間に威嚇されようがどうだっていい。ただずっと探していた彼女の手掛かりをこの目の前の男は持っている。


若しかしたら今すぐ会えるかもしれないと考えを巡らせていると先に聞いたより数段低まった聲が静止した。


「お前、名前になんの用だ」


この時リヴァイの心中は、妹のように可愛く思う彼女が聞かれると楽しそうに話していた男だろうことは解っていたが、名前がこの世界に来て数十年。ずっとほったらかしにしていた癖に今更何の用だ、危害を加えたり悲しませるようなら唯じゃおかねぇぞ?ああん!!・・・といった感じだった。柄が悪いのは致し方ない。外見と反してリヴァイは情熱的な性格だった。


しかし団員からも誤解されがちなリヴァイの本心を、出会ったばかりのイタチが分かるはずもなく、案の定誤解した。場の空気は警戒していた先よりも数倍張りつめたものになった。

傍らで名前の謂っていたイタチ君なら屹度あの子も喜ぶだろうと我がことの様に嬉しげな表情を浮かべていたエルヴィンも顔が引きつる。

彼らには分からないがイタチの目は万華鏡写輪眼に変わっていた。それ即ち殺る気。
イタチの目には目の前の男が名前を狙う間男にしか見えない。普段は冷静なイタチでも名前が関われば火影もひっくり返るような珍事を引き起こす。更に今ここにはサスケというストッパー(兼尻拭い)がいない。



そんな一触即発な空気を破壊したのは、そろそろ終わるだろうと友を呼びに来たレタス。自分によく似たイタチに驚き、思わず持っていたタオルの籠を落とした。

ゴトッという音に振り向いたイタチは血が騒めいた様に、この少年があの時名前の腹に宿っていた我が子だと悟る。
ジワリと目頭が熱くなるが、瞬きする暇すら厭わしいと食い入るようにレタスを見つめ、堪え切れなくなったのか、思いのまま駆け寄った。
名前は恐らく名前と決めたそれだと思うがまだ見確かなため、呼ぶことができないのが口惜しいと思いながら走った。

走りながら両手を広げ、レタスを抱きしめようとした。

二人の関係を理解した者は感動的な親子再会の場面を予想していた。

茫然と、あるいは男が誰なのか気づいたレタスが喜ぶ姿を・・・しかし、



「うぎゃああああああああああ!!こっち来るなってばよ!!!」



スパーン!!と落とした籠を掴み、イタチの頭部目掛けて全力でぶん投げたのが当たった。
気絶したイタチと落としたタオルの心配をするレタス。この二人の初顔合わせはこのような形で終わったのである。




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