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伸びた影法師は一人だけ 


ゆかり様リクエスト

F?O?R?−いえいえイタチです。の主人公(うちはイタチ成代わり主が火影になるお話)が、原作にトリップした場合。


***


ここは何処だ・・・?


うちはイタチに成り代わってそのチート過ぎる才能に浮かれまくった挙句、原作なんて知らねーと謂わんばかりにクラッシャーした元凶の名前です。

三代目に「次の火影はお前しかおらん」とか謂われて、ダンゾウに「儂が影で支える。お前の好きなようにやりなさい」とかお前誰?な発言されて、「お前が火影になるなら仕方がないな…里の医療関係は全て任せろ!」とかあの綱手姫と一時結婚騒動があったりと、最早原作イタチより波瀾万丈じゃね?な人生を送ってます。

四代目火影の着ていた自己主張の激しい羽織を着ること数年。俺の可愛いサスケも中忍試験を受ける様な年齢になりました。相変わらず「兄さん!」と愛らしい笑顔で慕ってくれるからもう嫁に来いって感じです。

クルクルと火影室の無駄に質の良い回転いすで回っていたらよく護衛の暗部に見られる。そのたびに月読を乱用したり歴代火影の写真の横にサスケの写真を飾ったり好き放題しております。

そして「火影様」「イタチ様」「五代目さま」などと呼ばれたり・・・そんな俺は火影邸に封じられている巻物の管理をしている時、うっかり開いてしまったのである。

だから冒頭、「ここは何処だ?」


現在グルグル巻きにされているうちは名前です。五代目火影です。だが


「どうしてお前がここにいる!!」
「この裏切り者!!」
「何が目的だ」

罵倒された・・・俺、何もしていないのに。


しかも最悪なことに


「うちは……イタチ!!あんたは俺がここで殺す!!」


うっ、サスケ・・・お前もか?!!


原作イタチのいる世界にトリップしました。

ああ、悲しいよ。俺のサスケがあんな顔をするなんて耐えられない。
両頬から伝う涙で水溜りが出来そうだ。


突然泣き出した俺に警戒していた周囲も吃驚したのかガン見されている。
そして俺にとって優しくないこの世界から元の世界へ戻れる気がした。

ならちょうどいい。一番適切な科白と行動を残そう。

「ゆるせ、サスケ」

――また今度だ。

コツンと額を小突いて、次に瞬きをした先に映ったのはいつもの火影室でだった。


***



サスケ視点


里に攻め入った敵を沈めていくが数が多い。俺に向かってくる数が増えていくのは開眼した写輪眼を狙ってらしい。カカシや他の上忍が気にかけてくるがその余裕もなくなってきた。

(くそっ!!こんなところで俺はやられるわけには・・・いかねぇ!!)


あの男を殺すまでは…と脳裏に過った背中の幻影を消そうと頭を振った時だ
何かが何もない空間から現れた。

バタバタと風で音を発て靡く外套の文字が視界に映った。

今消し去ろうとした背中と既視感を抱くその背中に大きく描かれた五文字に目を見張る。


「五代目・・・火影?」


まだ火影は三代目のはずだ。四代目は死んだから確かに次に就任するのは五代目。だが誰が・・・?

ゆっくりとその男は振り返った。そしてその顔に吃驚する。


(兄さん…?)


憎い兄だった。


男は何十人もの敵を一瞬で薙ぎ払った。その動きはどれも記憶の中に眠るイタチの動きと一致するが、可笑しなことに俺を守るようにこちらに向かってくる敵を真っ先に倒していく。

あれが俺の兄のイタチ?違うという声とそうだと肯定する声が入り混じる。

(ああ、頭が痛い。止めてくれ、これ以上俺を乱さないでくれ!!)



敵を薙ぎ払った男は木の葉の上忍たちに囚われた。その時、全く抵抗する様子を見せない。

大人しく縄にかけられ、連れて行かれそうになる男に向かって叫んだ。


「うちは……イタチ!!あんたは俺がここで殺す!!」


なぁ、あんたはイタチなんだろう?視線が交差し、奴の瞳に映る俺は昔の面影がない、この目の前の男を殺したいと憎悪の表情で睨みつけている。そんな俺を穏やかに、そしてそれ以上に悲しそうな目をしている。


じっと見つめているとスゥ――と男の頬を何かが伝った。

・・・涙?


俺と同じようにカカシたちもそれを見取ったらしい。息を呑む音が聞こえた。


(あ、ああ、兄さん?兄さん・・・?)


イタチなのか、兄さんなのか、混乱してしまう。
思わず後退ってしまう中、徐に男が伸ばす手に動きを止めてしまった。


イタチは動けない、なら俺は後退したのではなく近づいていたのか?



「ゆるせ、サスケ」

――また今度だ。

コツンと額を小突いて男は消えた。




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