旧サイト企画置場 | ナノ
右足の手錠、左手の足枷


yuka様リクエスト

人魚石IFマダラ娘


***



その男は神妙な顔つきで俺に云った。

「柱間・・・うちの名前が可愛過ぎてつらい」

「……そうか」

「まだ甘えたい盛りなはずなのに中々構ってやれん俺を『父上さま』と慕ってくれるのだぞ!ああ千鳥足で両手を伸ばして寄ってくる様子なんて見ているこっちが躓かないかとハラハラしていまいついつい抱き上げてしまうのだが全く後悔がない。しかしイズナに『いい加減にしないと名前が自分で歩かなくなるよ』と忠告されたのだが本心ではそれもいいかと思ってしまうのだ。歩けず、車いす生活を送るならどこぞの馬の骨に惚れて嫁にいく心配もない。ずっと家の中に閉じ込めてしまえばいいのではないかとな・・・」


ふゥ・・・と憂鬱げに溜息を吐くマダラを里の女衆がみたら黄色い歓声を上げるだろうがその理由を聞けば通報されかねん。自分の組織のトップを連行しなくてはいけない警務部隊も可哀想だ。

マシンガントークを一通り聞いた感想はまあ

「お前名前のもイズナのも声真似下手だな」

「・・・黙れ」


正直幼女の声真似は聞く方の鼓膜と心臓に悪い。
ブラコンに加え親馬鹿になったライバルをやや呆れ気味に見つめる。どうしてこう、折角顔はいいのだから性格ももう少し友好的になってくれないかと思う。

娘が生まれてから・・・マダラも変わったな、それもいい方にだ。
そうさせたのが俺じゃなくあの二人なのが少し悔しいがいい傾向だ。


幸せのお裾分けとでもいうのか、孫について語ることにした。


「それで俺の賭けごとまで真似しだしてのォ・・・今じゃどっぷり嵌っていざ遊んでやるときには札やら賽子やら自分のおもちゃ箱に入れてるしまつだ。ミトにも説教喰らったぞ」

「・・・それは貴様が悪い。まあ俺の名前は先日俺の絵を描いてくれたんだぜ、見たいか?見たいよな?ってか見ろ」

「(強制か・・・ああだから今日は後ろにデカい包みを隠してるのか)ああ」


来た時から何でコイツこんなもの持ち歩いてるんだと聞きたくなるくらいデカい包みを手放さなかったから気にはなっていたがそういうことか。元々描いたのはスケッチブックだったが感動したあまり術で引き伸ばし額縁に飾ったらしい。

千手では子どもの描いた絵は大体各家庭の壁にでも飾る程度だが流石身内大好き一族の筆頭だ。額縁だけでも相当値の張るものを選んだに違いない。


嬉々としてそのときの感動を語るマダラの話を聞き流し、受け取った絵を見れば

「なぁ・・・これがマダラか?」

「ああそうだ。芸術的だろう?お前の所の孫より余程センスがいいに決まっている」


うちの綱を貶されているようにも聞こえるがお世辞にも綱の絵心は平均を下回っているから返す言葉もない。

自慢げに語るがそこに描かれているのはマダラとはいえない。自分がモデルだと謂っていたから肖像画、それも子どもが描いた特徴だけ捉えた落書きだろうと失礼ながら思っていたが視界に入ったのは色鮮やかな抽象画である。とげとげの雲丹の様なものが判断基準になりそうだ。

確かに巧い。子ども処かその道のプロの作と言っても過言ではない。だが何故抽象画?
使っている色も子ども用のクレヨンじゃなく自分で採取してきた岩絵の具で描いたらしい。なにそれ器用ぞ。


まあ娘自慢は分かったから絵に頬擦りするのを辞めろ、そしてもう少し引き締まった顔に戻ってくれ。


里も一族も平和になったが、この親友の脳内は一部お花畑になってしまったのかもしれない。


その話を扉間にしたら、翌日名前と綱の子守りを自ら買って出た。
留守の間に家に来た宅配忍から代理で受け取った弟宛の額縁を、帰宅した扉間に渡した数日後、既視感を覚える光景を弟の部屋で見てしまった。


取りあえず見なかったことにする。


***

後書き
 狩人のハンター試験でキルアの料理の腕前が印象的でした。ゾルディック家はあらゆる技術の英才教育を受けているだろうと予測。何故抽象画かというと大人に子どもっぽい絵を描けといって描けるか?という疑問からです。主人公は妙に期待した面持ちのマダラを前に「描かなければ!!」と圧力を感じダラダラ汗を流しながら描きました(笑)リクエスト有難うございます。





prev next


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -