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頷け、肯定以外認めない


弥生様リクエスト

人魚石IF 現代パロ


***



はたけカカシは何気なく辺りを見渡していると見知った背中を見つけた。
現在は見慣れたものだが、その背中は前世を考えると見慣れない大きさだ。当時毎日のように見ていた背中と比べると大きいその背に向かって呼び止めた。


「オビト」
「……なんだ、カカシか」


振り返った顔はカカシと同じ場所の瞼が固く閉ざされている。
姓は変わらないし、相変わらず何の因果か同じ職場で同僚の男とこうして気軽に話せることが嬉しいと思うし、信じられないと未だに夢ではないかと疑ってしまう。


「呼んでおいて無視をするな。だからお前はバカカシなんだ」

おい。
お前こそオビトの癖になーに謂ってんのヨ。
前世で散々やらかした親友は生まれ変わっても性格まで良くはならなかったらしい。まあこれでもましだ。リンも転生していたから大人しいのだろう。


兎も角目的を果たさなければ、これまた前世同様暑苦しい同僚が五月蠅いと、今日の夜に飲み会を開催する旨を伝えたが返ってきた答えは『否』である。


「お前ね、親睦を深めるんだから参加しなさいよ」


可愛い子もくるよ?と誘うがリン以上に可愛い子はいないと断言しやがった。このリン馬鹿が!しかも本望だと真顔で言ってくるし、お前ホントなんなのよ。
呆れたと溜息をつくが何故かオビトも一緒に出入り口に向かいだす。いや、な〜んでお前も?


「今日はうちは一族の会合があるんだ」

成程、しかし多くないか?最近のうちは一族の集会が例年の倍近くに増えたのに会社の皆は困惑している。まあ前世はうちは一族に苦渋を味わらされたようなもんだし、いくら現代じゃ集会を開いていようが関係ないといっても正直苦虫を噛み潰したよう気持ちになる。
まあ柱間さまたちがいるから何とかなるデショと言っておいたけど流石の俺も嫌な予感がする。でもオビトの表情からいって今更千手一族に何かしようって感じじゃなさそうだ。


無言で帰路につくオビトの背中は心なしか、前世でリンを助けに行くときにみた背中よりも小さく見えた。







 うちは一族は現代においてもエリート一族として名を馳せている。オビトもうちはの何本目かの指に納まっている。一応宗主はタジマになっているが、実質トップはマダラ、その補佐に弟のイズナ、相談役はフガクさんが務めている。

社会人のオビトと年が近いのは、大学生のシスイと高校生のイタチ、中学生のサスケの順。
どいつもこいつも記憶持ちだから態度がデカい。特にイタチとサスケ。確かに色々とやらかしたし、利用もしたがもう少し年上を敬えと思う。

カカシと別れたオビトは嫌々実家のある集落(実際はほぼうちは一族の人間が住んでいる団地)に着いたが気が重く。

カカシたちと飲み会も面倒だが、この集会のほうが酷い。以前は精々年始の挨拶くらいで済んだのに今年からカカシが思っていたように数倍どころか数十倍に増えた。しかも強制である。逆らうと集合時間に遅れる毎に電話とメールが携帯を騒がせる。


成人祝いにカガミさんから貰った腕時計で時刻を確認する。集合時間10分前、上々だ。昔の自分なら信じられない成長である。
インターホンをならし、ミコトさんが出迎えてくれた。案内されて通されたのはいつもの広間、ほぼ全員集まっている。


「おせーぞ、オビト」
「そうだ、ナンセンス」


・・・うん、まずお前らは黙れ。神威で吹き飛ばしたい。
我儘兄弟を宥めるのはシスイだが…慣れたように駄々っ子を抑えるなんて、そのポジションに板がついたなと憐れみの視線を向ける。

上座にはムカつく顔が一つ我が物顔で居座っている、マダラである。ほんと神威が使いたい。
無いと分かっていてもつい左目に手をあててしまう…。あ、マダラがこっちみて鼻で笑った。うぜぇ…。隣にいるイズナさんも優しそうな風貌からは想像もつかない辛辣なコメントを寄こす。シスイがトマトと団子でこっちの兄弟を黙らせたようで少し静かだ。



だがその視線は上座を眼光だけで殺すのではと思えるほど鋭い。マダラたち兄弟とイタチとサスケは仲が悪い。お互い親は宗主と相談役という間柄で酒を飲みかわす仲なのに対し、この兄弟たちは水と油、千手とうちはである。
まあこの両者の溝は何度生まれ変わろうが埋まることがないだろうが・・・



「時間だ。皆よく集まったな」

偉そうに一瞬で静寂をつくり、自分の舞台だと言わんばかりの顔をするのはマダラ。おいおい、最初くらい宗主のタジマさんにしゃべらせろよ。

「重要な知らせだ…サスケ」

えっ?ここでサスケ?俺以外にも戸惑う奴は多いらしく場はザワザワと騒がしくなったが再びマダラの一声で静かになった。サスケは全く動じた様子もなく、すっと立ち上がるとマダラの前まで進み出て集まった一族のものに苦々しそうな、重たい聲で報告する。サスケの口から発せられる内容に表情を変える一族は三通りいる。


「っち!だから最近扉間が珍しく定時を過ぎても残っていたんだな…?」

「あの白髪野郎が…今度こそ殺す!」

「ナンセンス!!」


サスケ同様顔を歪めて拳を握りしめるマダラやイズナ、イタチたち……等々



「あ〜だからカガミさんは不参加なんだ」

「仕事が忙しいって言ってたしな」


集まったのは一族全員ではない、一部は都合がつかなかったりで不参加だが例外がうちは一族でありなが千手扉間に遣えているカガミである。この近年頻繁に行われている集会に彼だけは断固出席しない。まあ着たら着たらでシスコンどもが煩いからな。


内容に納得したと半ば悟りを開いたような表情のもの。シスイもこっちになる。


そして


「またか・・・」


俺、うちはオビトは毎回呆れたように溜息をつくのである。




 因果応報とは本当に信じられない。うちは一族が纏まって現代に同じ姓、同じ時代に生まれたのに対し、誰よりも一族と縁深い彼女だけがここに生まれなかったのだから・・・。
名前を見つけたのは彼女と縁深い人間だがこのシスコン達はそれが自分じゃなかったこと、そして見つけたのがあの二代目だったことが気に食わないと公言している。事あるごとに二人の仲を邪魔するため、こうして一族全体を巻き込んでくだらない作戦を立てているのだ。誰がカカシ達にこのことが言えるか、恥ずかしくて情けなくて俺には出来ん。



 今回の議題はサスケの報告で発覚した名前と二代目の旅行をどうするか。しかも二人っきりだそうだ。計画は三か月も前から立てられていて発覚したのはサスケが名前に休日遊園地に行こうと誘ったのが断れたことだったりする。兄妹で遊園地行くつもりだったのか…。問い詰めると二代目から誘われて温泉に行くとか。まあ、名前も俺より一回分(正確には二回)多く生きてんだし、遊園地より温泉が好きとかいうのも分かる。サスケ曰く、はしゃいでいる名前が可愛かったらしいが、俺からしたらあの無表情がはしゃいでる様子など想像できない。

そのときの様子を想像してんのか鼻血をだしているシスコン共が気持ち悪い。
リン助けて、このカオス…マジ怖い。
脳裏でリンが「頑張れ!」と手を振った気がした。


脱線してきたシスコンどもも邪魔しに行きたいところだが、生憎と相手は三か月前から計画を練っていたのだ。当然社会的に重役ポジションに納まっている連中も、学生で運動部所属の兄弟は当日に練習試合が組まれている。千手側もこちらの行動を読んでいるな。
可哀想にシスイが巻き込まれそうになったが彼もその日は予定があるとかで無理だった。
で、


「俺かよ…」




「オビトの癖に文句をいうな」
「これ以上ない役だ、寧ろ誇りに思え」
「まあお前なら他のものより生き残れるだろう」
「オビト、ついでに殺ってくるなら息の根は止めないでね?止めは俺が刺したいし」


シスコンに巻き込まれたのは俺だった。他にもいるだろうが!と叫びたいところだが生憎相手は千手扉間、名前も昔勘違いしたように誤解されやすい男だが、今では名前以外皆知っている。あの男は愛妻家だ、それも重度の。名前の安全とのたまわって盗聴器・GPS・盗撮を本気でやっている…嗚呼これはシスコン共もやっているか。よく捕まらないな。

兎も角、前に今回のようにマダラたちがいけない代わりに派遣された一族の人間が二代目に容赦なく半殺しにされたため、ある程度腕がたつもの限定になってしまった。シスコンでとち狂っていても一族の人間を思いやる気持ちは残っていたのかと感心した・・・。

邪魔するといっても、奴のテリトリーに入ろうものなら気が付けば背後に降臨してました、なんてことがザラだから不用意に近づきたくない。出来ることは後でシスコン達にぐちぐちと嫌みを言われるのを回避するために名前の写真を一枚でも多く撮っておくことである。


現像すると何枚かしか奴らに見せられないことが判明する。他は二代目の妨害された写真しかないからだ。今回は七割か、三割はまともだから前より俺も腕が上がったのか?
三割の内一枚を手に取る。二代目のいる方向を見て珍しく柔らかく笑う名前にドキリとしたのは滅多に見ないものゆえの吃驚からだろうと思いたい。






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