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ヒールに口づけ

唐草様リクエスト


人魚石主が幼児化(中身も)


※黒ゼツ=マダラと視界を共有・本編IF設定でお送りします。


***


拝啓 あの世にいる兄者


 兄者はあの世でどうお過ごしだろうか。俺は狭間にいた事しかないので想像できないが出来れば屹度あの世で暴れまわっているマダラを押さえつけておいて欲しい。俺はこの世で名前と楽しくやっているから邪魔されたくないので宜しく頼む。

名前は兄者が昇天してから3o身長が伸びたぞ。抱き込めばすっぽり納まるこの今のサイズもいいが矢張り昔の姿も懐かしいから何とも言えない。ただ今よりも小さい頃の姿も生で見たかったと追記しよう。ミコト(今生の名前の母親)から生まれてから今日までの写真を見せてもらったり、イタチという名前の兄が任務で留守の間に奴の部屋に隠された名前の成長記録を拝借したら余計に見たくなった。

兄者の孫の綱がいただろう?アイツが今の火影だ。この間名前と一緒に連れてきたのだがあの時兄者が賭け事なんて教えたから今じゃすっかり忍びの三禁の代名詞に名を連ねる困った縁者だ。
『伝説の鴨』とまで呼ばれている。だが里の金にまで手を出さないようには見張っているから安心しろ。

それでその綱手が先日ワシの自宅まで態々出向いてある薬を売りつけに来た。先に謂っておくが腰痛の薬でもグルコサミンでもないからな。そう、服用者の体内に浸透して内部から急激に若返らせチャクラを圧縮し・・・まあ要するに『若返りの妙薬』だった。

その辺の奴が売り込んできたのなら門前返しだが、忍界一の医療忍者は伊達じゃない。薬が人体に害がないことまで実証済みと来た。その日は丁度イタチの名前アルバム秘蔵verを見つけてな、実際に幼少期の姿が見たくなったんだ。

綱も綱で口が上手い。気づけば右手にやや薄くなった財布、左手には小瓶が握られていた。
かなりぼったくられた気がしないでもないが、三日間も名前の小さい頃が見れるんだと浮かれてその場で現金一括購入をしたことを悔いてはいない。


しかし冷静になってから焦ったぞ。何せこのことが名前にばれたら暫く口をきいてもらえないだろう。もしかしたら実家に戻るとまで言うかもしれない。

・・・でも見たい。だが怒られるのは嫌だ!
そこでワシは思いついた、共犯者を作ろうと。


ミコトに持ち掛けたのは万が一名前にこのことがばれても実家に帰るなんて言い出さないように身内も犯人に仕立て上げるためだ。他の協力者は一番名前が信じそうなナルトとシスコン拗らせたサスケ、サスケの写真(これはイタチの部屋にあったのを拝借した)を餌にサクラも巻き込んだ。

そんなわけで名前に薬を飲ませようと思う。写真が出来上がったら墓に供えておくから見てくれ。


敬具




***




薬の効力は三日、今日はその一日目というのに・・・


「おっしゃんだーれー?」


目の前には警戒する子猫宜しくソファの影からこちらを睨む名前。今すぐ抱きしめたいがつい先ほど実行して手の甲を引っ掻かれた。

こちらが近づけば近づくほどじりじりと後退していく姿も可愛い。
推定3歳といったところか。写真でしか知らない妻の愛らしい姿に顔が緩む。
精神も幼児化しているがそれは嬉しい誤算だ。元に戻った時にその時の記憶が無ければ尚よし。

「ほら、菓子をやろう。こっちへこい」


名前の好きな菓子を餌につるが見向きもしない。

扉間は自覚していないがこれも不審者の科白だ。
しかし彼は彼女が時折、チラチラと物欲しそうにこちらを見るから発狂しそうになった。


「めー!ママがしりゃないおっしゃんからもらっちゃだめっていった!」


ほう・・・親の躾はいいな。しかし「おっさん」だと?!ワシはまだ・・・いや、考えるのはよそう。
ああ、でも可愛い。ビデオも用意しておけばよかった!!

因みにサスケたちはとっくに追い払っている。
薬を盛るところまでいればそれでいい。避雷神の術で強制的に屋敷の外に送り出し、屋敷の周りに張っている結界を強めればここには俺と名前しかいない、と。

屹度今頃サスケはイタチにでも泣きつきに行っているだろう。そろそろ奴も里に帰還しているころだ。恐らく部屋から消えたアルバム+αにも気づくに違いない。

五月蠅い奴が来る前になんとか名前を懐かせなければ!!


何度も名前を呼ぶ。
さあ!こい!


・・・扉間の顔が彼を知る人間にとって凶器と化していたが、一番扉間を知っている名前には記憶がなかったので元に戻った後もトラウマにはならなかった。しかし幼子なりに目の前に不審者がいることを察したのだろう。幼児化して一日、夕方に空腹になった彼女が折れるまで、扉間は不審者の常套手段を根気よく繰り返したのである。


***




三日後、扉間にとって運が悪いことに元に戻った名前にはバッチリ幼児化していたときの記憶が残っていた。11歳の少女の前で正座し項垂れた外見30代のおっさんは視界てきに中々厳しいものだ。しかも彼に反省の色は見られない。

因みにその隣では無断で盗撮していたことがばれたイタチも反省中だ。仲良く膝の上にテンゾウに作らせた木製のマダラ人形が置かれている。正座した上に重りを置いているだけでも辛いのに敢えてマダラ(しかも腕を組んでふんぞり返った姿)なのは二人の精神にも苦痛を与えるためである。

扉間はこれプラス寝室にまでマダラ人形(しかも一つ一つ表情が違う)に囲まれるように置かれている。

名前が幼児化した三日間と同じ日数、この苦行に耐えた扉間は三日後窶れていた。
しかし彼はこの三日間堪えられたのは他でもない、名前の写真を死守したからだ。

本人に見つかれば容赦なく燃やされるだろう。
必死で隠し通した彼は約束通り、兄の墓だとばれるから終末の谷の巨像まで出向いてお供えという名の惚気をしてきたのだった。


そしてその一枚の写真がまた波乱を生み出すのである。



***



――『暁』

それはS級犯罪者が所属する傭兵部隊。その目的は不明だがメンバーは強者ぞろいでリーダー、そして裏ボスには恐ろしい男が控えている。

そう、うちはマダラだ。
世間では死んだとされているが現段階はそれも事実。しかし彼は死ぬ前に再びこの世に甦るためいくつか手を回していた。

恐ろしいことにオビトという身内まで利用し、監視目的で創り出した黒ゼツを通してあの世から現世の様子を見ていたのだ。


マダラの意志の塊である黒ゼツは或る日、そう、偶然終末の谷まできた。
何故彼がここにきたのか、そしてこの日を選んだのに理由はない。だが彼が来た日は奇しくも扉間が訪れたのと同日だった。

幸いなのは先に扉間がいたことである。何故奴がここに?!とあの世で吃驚するマダラだったが扉間が柱間像になにか置いて行ったのに気を魅かれた。あの堅物はなにを置いて行ったんだ?と好奇心で手に取った彼が見たのは・・・


『子どもが出来ました。嫁似です』

その文字の上には彼の溺愛してやまない、復活したら真っ先に掻っ攫う予定の名前に瓜二つな幼児を抱いた殺したい男のツーショット。



ギイイイイイイイイッ!!!!!!!


ゼツを通してこの森一帯に響き渡った絶叫が空気を震わせ、動物たちを怯えさせたのだった。


そしてアジトに戻ったゼツ(但し中身はマダラが八割を占めている)の八つ当たりをオビトが、そのオビトが受けた理不尽な仕打ちから発生した苛立ちがペインに、ペインが小南に八つ当たりするわけもなく、彼の苛立ちは幹部へと伝染していったのである。




 その頃、扉間宅では

「いいですか、この写真も没収です」

「ああ!そんな・・・!頼むそれだけは許してくれ」

「ダメです」

「待て待て待て・・・ああああああああああ!!!!」


扉間の保管庫こと三代目の自宅に抜き打ち調査した名前によって幼児化した写真は黒ゼツが持っていったそれ以外全て灰と化したのであった。





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