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この気持ちが愛なら、


宇宙様リクエスト

想弄坏主(鬼灯の九尾→銀魂高杉→NRT界の妖狐に転生した主人公で九喇痲夢)の第四次忍界大戦にて


***




それが恋だと認識したのは何時だったか。
――初めての恋だった。


九喇痲は現在ナルトに封印された尾獣だ。宿主たるナルトが戦場に出るなら必然的に彼もそれに付き合わないといけない。長い年月を経て・・・とはナルトたち人間側の意見であり、九喇痲にしたら欠伸をしたのと変わらない一瞬の時間で随分と打ち解けた人柱力と妖狐。
ナルトは仲間を守るために力を貸してほしいと言った。マダラが始めた戦争で傷つく仲間を助けたいと。人間を助けるために協力するなど昔の自分が見たら哂うだろうと自嘲したが、それと同時にどうしようもなく湧き上がる怒りを元凶たるマダラにぶつけたかった。


百年近く逢っていない女。初恋の相手。
女はいつだって俺の視線に気付いている癖に、気にした風もなくひらひらと九喇痲をただの空気のように扱った。女自身が風の様に飄々として空気を翻弄する。

百年処かもっと長い間行方をくらましたこともあるのに胸を焦がす激情に名を付けるなら『嫉妬』というべきか。



百年前――
突然出掛けると云って今の木の葉の里よりやや西に離れた場所に一人下った後、音沙汰なし。出かける際誘われなかったということは、即ち「ついてくるな」の意。
渋々引き下がり、今か今かと帰りを待ち続けるがその予兆はない。
愚痴と暇つぶしを兼ねて名前が気に入っている守鶴でも弄ってくるかと腰を上げ、砂まみれの地に居座った。

いい加減にしろ!!とっとと迎えに行けばいいだろうがああああ!!

守鶴の叫びに「そんなことして鬱陶しがられて嫌われたらどうする」と訴えれば「知るかボケェェ!!」お前そんなキャラじゃねぇだろうが!!という主張も右から左。

散々守鶴に「ヘタレ」だの「初心振るんじゃねえ」だの言われて恐る恐る迎えに行った。
恋というのは真箇に恐ろしく、それでいて衝動的だ。
人間の負の感情を持つ九喇痲のそれは一度火が付くと激しく燃え盛る炎と化す。一目惚れから始まった恋は止まることを知らずに加速して、守鶴を始め8尾獣たちが砂を吐く甘さを隠すことがないほどの愛情は、ちょっと目が合った、手が触れた、九喇痲の機嫌が悪ければ同じ空間にいたというだけで嫉妬の対象となる。

守鶴がいなければ八つ当たりで山の一つ二つ吹っ飛ばしたかもしれない。
何だかんだで結局元の住まいに戻ってきても、名前が好む畳の部屋から出られない。名前が傍にいないと落ち着かないが嫌われるのは嫌だから附いていけない。名前の匂いを感じられる此処に居ること以外九喇痲に選択はなかった。屋敷にいる間、というより名前といる時や同類たちの所に行くまでは人型を取る九喇痲は今も見目麗しい青年の姿に似つかわしくない、畳の上をゴロゴロと転がり、天井を仰いでいた。


鼻孔には部屋にしみ込んだ煙草の匂い。煙管箱は置いてあるが、その上にお気に入りの煙管が無い所を見ると持っていったらしい。
窓際で月を眺めながら傍らに煙管箱を引き寄せ、時折コンコン、と音を立てながら灰を落とす音。新しい葉を詰めながら火を点し、煙をゆっくりと吸い込み吐き出す僅かな息遣いも耳から離れない。嗚呼、相当重傷だ。


それから後、好いた女が自分とよく似た容貌の男の下にいると聞き知るや否や、男の咽元を噛み千切らんと怒り心頭で襲い掛かり、あっさり写輪眼に操られ、終いにはうずまきの人間に封印される羽目になるとは思いもよらなかった。



 そして今、目の前にあの時噛み殺したかった男がいる。
そう、うちはマダラだ。余計なものもいて、十尾擬きの頭上でこちらを見下ろしている。


不意にマダラが馬鹿にしたように哂いながら何もない空間に向かって「そろそろ出てこい」と言った。

また何かあるのかと戦慄したナルトたち忍連合軍と「まさか・・・」と期待と怒りが入り混じった九喇痲はその空間を凝視する。

あの頃、吸われることがなかった白い煙は窓から陽が沈みかけた外へと消えていった。
その煙が続くように空間から流れる。
九喇痲の知る音が静寂を微かに震わせた。

「久方ぶりだな」
百年の月日を感じさせないような気軽さで名前が云う。


果たして誰に向けられた言葉なのか、名前を知る者は圧倒的に少なく、それでいてその正体まで把握しているものは数える程度。だが九喇痲はそれが自身以外にも向けられて云われたものではないと察し、ムッと顔をしかめた。

「何で手前がここにいるんだ?」
 (拗ねて)答えない九喇痲の代わりにビーの口を通して八尾が名前に問う。

その質問に答える様子はなく薄ら嗤いながら名前はあろうことかマダラに寄り添うように腕を絡め再びぱ、ん、ぱ、と煙管を吸いだした。
聞こえていないわけではない。その証拠に顔には意地の悪い笑みが浮かんでいる。
すり寄られても嫌そうな顔一つせず、寧ろ身を預ける名前を支えるように腕を廻すマダラと、名前が灰を落とそうとごく自然に煙管をオビトに向けて文句言わずに煙管箱を差し出した姿から三人の上下関係が分かる。

緊迫した空気に再度火をつけ(勿論オビトが点した)、漂った白い煙が場違いだった。


<おい、代われ>
ナルトの中で低い聲がそう告げた。もう和解した関係でも思わずビクリとするような感情が籠められた聲に<早くしろ>と急かされ、已む無く交代。
他の元人柱力と尾獣たちの精神世界に逃げ込み、俯いた九喇痲の様子を窺う。決して一人じゃ怖くて見れないというわけではない。


ナルトがサクラを好きなように、九喇痲が好きな相手の話も聞いてはいたがナルトは九喇痲が名前の前ではどれだけ変貌するのかなんて知らない。知っているのは尾獣たちのみ。8獣は一斉に砂を吐く覚悟を決めた。覚悟があるのとないのでは異なるらしい。

守鶴に関しては器用に耳を伏せ、目を瞑り、口を押えて「見ない・言わない・聞かない」を態度で示している。それでも獣の感覚は鋭く、聞きたくないものを聞いてしまった。


名前 愛してるぞ―――――!!!



 穢土転生されて甦った火影たちも、加勢に来たサスケたち鷹も、復活した五影と大蛇丸も時が止まった。
ナルトと交代した九喇痲はそれまでの目の色が変わり、頬の傷が深まるだけの小さな変化ではなく、黒髪の男に姿を変えた。そしてそれはオビトやマダラ、サスケたちうちはに通ずる容姿で古い装束を纏った“人間”の男が咆哮した。
人の姿をしているにもかかわらず、その告白は獣のそれと似た激情が籠められた科白だった。


告白大会じゃあるまいし、戦場で愛を叫ぶ九喇痲の姿ほど異質なものはない。
いや、あった。それ以上に異質なのは


「ああ云っているが・・・どうするつもりだ?」
二人仲良く十尾に食われてしまうか?と面白そうに問うマダラに哂い返し、

「おもしろき、こともなき世を・・・おもしろく」

 そういって名前は九喇痲に向けて笑みを深めた。
焦がれたようにそれに頬を赤らめる九喇痲と精神世界で「「何やってるんだ/ってばよ!!」」とツッコミを入れるナルトと守鶴。

茫然とする元人柱力たちに呆れた様子の尾獣たちは「あ〜あ、また始まった」といった顔つきで傍観体勢に入った。

完全に女ボスに従う下っ端と化したオビトが一人冷静に「どうします?」と問いかけるがそこには名前の姿もなく、マダラが「あそこだ」と指さした先に九喇痲の頬を撫でる光景が映る。

突然現れた名前に九喇痲の近くにいたサクラたちが驚く中、悪戯っぽく撫でていたそこに口づけを落とした。


「ここにして欲しかったら・・・メンマの身体から抜けるまで我慢しな」

ここ、と指先が九喇痲の唇に触れる。
かああと益々熟れたトマトのようになった九喇痲とその内側でナルトたちのツッコミが炸裂する。それすらも解ったように一人嗤う名前は敵か味方か、未だ判断が付かないが取りあえず九喇痲は名前にべた惚れなのはこの場にいる全ての者が知ったのである。



(この気持ちが愛なら、戦場の真ん中で叫んでみようと思う)



***


九喇痲の扱いが本編に殆ど登場していないため不安定。
ツッコミ、といっていいのか分からないナルト君たちの反応です。


想弄坏主の科白『おもしろき こともなき世を おもしろく』=高杉晋作の辞世の句です。
SSの高杉さんを経ているから鬼灯の妲己さんより過去に囚われやすくなり、精神的に退化したけど常人よりは余裕綽々な主人公。




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