一狩り
※注意!
モンハンパロとなっております。舞台はユクモ村ですが、1人ではなく数人のハンターがいます
また、戦闘描写に矛盾が多数存在しております。スルーしていただけるとありがたいです!











この村には多くのハンターが訪れる。そのために、緊急事態の時でもハンターがいない、という事がない。それに加え、そこに腰を置いているハンターも少なくはない。
彼、エヴァライトもその一人で、ギルド[ブラッドコマンド]に所属している。ギルドマスターであるディーラの右腕で、一部のハンターの間では『閃光のエヴァ』と呼ばれているほどの腕が立つハンターなのだ。そんな彼は今、集会場のクエストボードの前に立ち、そこに張り出されている紙と睨めっこをしている。ディーラは他のハンター達と共に大型モンスターの狩猟に言っており、自分も狩り出掛けようと思ったのである。
エヴァライトの背中には、嵐を司る古龍である、アマツガマツチの素材から作られた[凶刃 催花雨]が天井にぶら下がっている照明の淡い光によって僅かながらに輝いている。ソロでも十分な実力を持っているエヴァライトが此処までクエストに悩んでいる訳。ただどの大型モンスターを狩りに行くか。それを悩んでいた。
紙にはクエストの詳細、そして……狩猟環境が不安定であるかどうかが記されていた。
一匹の大型モンスターを狩ると、新たな大型モンスターが現れる、ハンター達はこれを「乱入」と呼んでおり、もし乱入されたとしてそのモンスターも狩る……これが狩猟環境が不安定ということだ。
ギルドの方では、乱入されたモンスターを無理に狩る必要はない、とあるのだがエヴァライトは必ず乱入されたモンスターは狩っていた。
何故、あちらからわざわざ来た大型モンスターを見逃さなくてはいけないのか、というプライドがあったからだ。ちなみにディーラもこの考え方である。
彼は数十分かけて、一つのクエストの詳細が載った紙に手を伸ばした。
標的は[リオレイア]、場所は孤島。エヴァライトはこれを受付に持って行こうとして__


「あ……エヴァさん……」


声をかけられた。背後からの声にエヴァライトは振り向き、その少女を見る。軽装で動き回ることを重視した鎧。腰には氷牙竜と呼ばれているベリオロスから作り出された[ホールドボッシェ]が携えられている。無数の棘からは、氷牙竜と呼ばれるに相応しい、全てを凍てつかせる冷気をモンスターに与えることができる。最近、この村に来た新米ハンターだが、実力も確実に伸ばしている少女の名は那智。


「……小娘」

「そのクエスト、一緒に行ってくれるんですか?」

「お前が貼ったのか?これは」


彼は言った。彼女はクエストボードに貼られたものに参加していることが多いのだ。メンバーを募集するなんてよっぽどの理由がない限りしないだろう。

「……何故お前が」

「ちょっと素材が足りなくて……クエストボードにも貼ってなかったのでしょうがなく」

「他にメンバーはいるか?」

「いえ、今のところ僕だけです……」


すると、エヴァライトは受付に紙を持って行き、パーティー参加の手続きを済ませ、那智の元へと戻る。そして無言で行くぞ、と合図をする。彼女はぽかんとしていたが、顔を引き締めると彼の後についていった。
孤島に向かう馬車に揺られている間、二人は会話を交わす事はなかった。


*


孤島は比較的に気候が安定している場所で、ホットドリンクやクーラードリンクを必要としない。晴れた空は清々しく、空気もよい。だが、人間にとって環境がいい場所には必然的にもモンスターにも過ごしやすい場所となってくる。偶然にも那智と一緒の場所に放り出され、狩りが開始された。既に周りには小型モンスターがおり、エヴァライト達を見つけると、獰猛な瞳をぎらつかせ向かってくる。那智が武器を取り出す前に、彼が飛び出した。モンスターに急接近し、太刀を引き抜いて力任せに、だが無駄のない動きで斬り付ける。再び上から斬り付け、突き、そのまま斬り上げた。一連の太刀の基本攻撃でモンスターは動きを止めた。武器の柄にかけていた手を放し、那智は感嘆の声を漏らした。


「すごい……」

「構えろ、小娘。レウスのお出ましだ」


瞬間、頭上から羽音が耳を打った。見上げると、かなりの大きさの雌火竜、または女王と呼ばれいている全身を緑色の鱗を纏った、翼を持つ竜リオレイアが舞い降りてくるのが見える。風圧が届かない場所まで移動し、エヴァライトは一つのピンクの玉を取り出すと、それをリオレイア目掛けて投げ付けた。見事にそれが当たると、パン、と音を立てて弾け、辺りに不思議な匂いを漂わせた。ペイントボールは匂いによってモンスターの位置を知らせてくれるハンターにとっては必需品の一つである。


「エヴァさん、何か作戦みたいなものは……?」

「特にない。隙を見つけたら斬り込め」


なんとも男らしい回答に、那智は苦笑しながらリオレイアを見据えた。既に相手はこちらの存在に気付いており、先ほどの小型モンスターよりも鋭く、貫くような瞳をこちらに向けていた。


「ガードしておけ、咆哮が来る」

「はい」


彼の言葉に那智は腰から片手剣[ホールドボッシェ]を引き抜き、腕に取り付けてあった盾を構えた。リオレイアが身体を持ち上げ、口を大きく開いた瞬間、エヴァライトは駆け出した。それに驚いた彼女は思わず声を上げようとしたが、それは咆哮によって遮られた。盾によって耳を塞ぐことはなかったが、凄まじい咆哮により、僅かに後方へと仰け反る。慌てて、エヴァライトに視線を移してみると、既に一撃、二撃と攻撃を与えていた。何で、と疑問に思っていると頭上に太刀を回し、ステップで後方に下がりつつ斬りつけ、回避し彼は那智の元へと戻ってきた。


「咆哮、大丈夫だったんですか?」

「耳栓をしている」


簡潔な答えが返ってきた。那智はすぐに納得する。そんな数秒の間に、リオレイアはこちらに突進を仕掛けてきていた。巨大な体躯、何よりも足についている鋭い爪に当たれば、ただでは済まない。那智は再び盾でガードを行い、エヴァライトは太刀を収めて横へと前転しそれを回避した。
倒せなかったと感じたのだろう、リオレイアは振り向き大きく口を開いた。そこには炎が集結しており、次の瞬間、火球が飛んできた。予備動作で理解していた二人は左右に飛びそれを回避、そしてエヴァライトはそのままリオレイアへと向かっていった。
瞬間、リオレイアが宙に舞った。これでは攻撃が当たらない、彼はスッと那智の方へと視線を送った。
それに気付いた那智は腰のポーチから一つの小さな玉を取り出し、リオレイアに向かって投げつける。それは途中でパッと弾け、辺りを白に染め上げた。風景の色彩が戻ると同時に、リオレイアは足をばたつかせ、地上へと落下してきておりその隙を見逃すはずもなく、エヴァライトは太刀を叩き込んだ。那智もすぐにリオレイアに駆け寄り、タンッと小さくジャンプしつつ片手剣を引き抜きリズムよく刃を叩き込んでいく。目が見えずにもがき苦しんでいるリオレイアの尻尾を狙い攻撃を続ける。
リオレイアの呻き声が途中で途切れた。恐らく目が復活したのだろう、その身体を二本の足で持ち上げ小さく吠える。エヴァライトと那智の二人は素早く傍から離れ、様子を窺う。
すると、ギロリとリオレイアは二人を睨みつけると再び翼をはためかせ、上空へと舞った。那智もそれをみて再び腰のポーチへと手を伸ばしたが、エヴァライトが制した。


「移動だ、投げても落ちないだろう」

「そうですか……」


エヴァライトは太刀を収めながら、空を見上げる。丁度、リオレイアは身体の向きを変えてどこかへと飛んでいってしまう。しかし先程ペイントボールを投げ付けておいたおかげで、見失うことはない。


「……行くぞ」

「はい!」


*


リオレイアを追って移動すると、なにやら熱気が肌を撫でた。


「……キレてるか」

「怒り状態ですね……」


リオレイアは怒り状態になると、口から常に炎を吐き出しており、炎系統の攻撃がさらに厳しくなる。それでなくとも尻尾を縦へと回転させる攻撃には毒が含まれており、それによって身体が犯される場合もある。二人は近接武器のために、攻撃に当たるリスクが自然と高くなっていく。キチンと、引き際を得ていないと大怪我をする可能性だってある。


「危なくなったらガードしろ、いいな?」

「エヴァさんも気をつけてくださいね……」

「小娘に心配される事はない」

「なんですかそれ!」


せっかく言ったのに、と頬を膨らませながら那智は言う。しかし、エヴァライトはそんな彼女の肩を叩き、駆け出した。足音と気配で気付いたのだろう。リオレイアは身体を仰け反らせ咆哮する。しかし耳栓をしている彼にその咆哮は届かない。彼は足にむかって斬撃を叩き込む。那智も咆哮が消えてからリオレイアに駆け寄り、エヴァライトとは反対の位置で斬撃を加える。二人の猛攻にリオレイアは堪らず呻き声を上げ怯む。彼はそれを好機と受け取り、基礎攻撃から変える。初太刀は左から頭上を通すように回転させ横から斬りつける。ふた太刀目は逆回転。さらに小さく捻るように斬りつける。
そこで体勢を立て直したリオレイアが、片足を少し引いた。那智は咄嗟にガードを行うが、彼は回避する素振りを見せない。リオレイアが片足を少し引くモーションをした後には必ず、尻尾による回転攻撃が飛んでくるのだ。それはエヴァライトも理解しているはずだ。リオレイアが体躯を躍らせる。尻尾はエヴァライトを確実に捉えられる位置にあり__


「エヴァさん!」


思わず那智は叫んだ。しかしエヴァライトは慌てる様子もなく、最後であるグッと身体を捻り、遠心力に太刀を乗せ一撃を叩き込もうとする。それは身体を尻尾の軌道から逸らし、太刀の刃を確実に尻尾へと届かせる絶妙な攻撃だった。気刃斬りを尻尾に叩き込まれ、ブチリと音を立てて切り落とされた。衝撃と激痛により体勢を崩したリオレイアは再び地上へと落下した。二人は一斉に斬撃を叩き込む。体勢を立て直す前に少しでも多くのダメージを与えておきたいところだ。
すると、エヴァライトは那智に離れるように促す。


「もう少しですかね……?」

「多分な」


太刀を収めながらエヴァライトは再びペイントボールを投げつける。この後、もし逃げられたとき用に、そもそも逃がすつもりなどないのだが。
リオレイアは二人に背中を晒し、足を引きずりながら移動を始める。それを見たエヴァライトは手早く那智に聞く。


「閃光玉あるか?」

「はい、投げます?」

「あぁ」


少し足止めをしようと思い、那智に先程使った閃光玉を投げてもらう。


「ギャオオオオオ!!」

「攻撃してろ、俺が罠を仕掛ける」

「了解です!」


リオレイアが吠えている中、エヴァライトは足元へと飛び出し、落とし罠を設置する。
その間に那智は言われたとおりに攻撃をする。すると、目が見えていないリオレイアは尻尾を振り回し始めた。それをガードし、やり過ごすと、その攻撃を喰らったであろう彼の身体が地面へと叩きつけられ、転がされていくのが見えた。足元から回避しようとして運悪く切り落としたはじの、あまりリーチのない尻尾に捕まり身体は吹き飛ばされたのだ。しかし、罠は設置できたようでリオレイアはズボリと身体を地面に沈めた。


「ぐっ……!麻酔玉を早く投げろ!」

「ッ!!」


心配そうに駆け寄って来ようとした那智を一喝し、エヴァライトは横腹を押さえつつ立ち上がった。彼にそう言われ、那智は身体を反転させ素早く麻酔玉を動けないリオレイアへと投げ付けた。すると、あれだけ激昂していたリオレイアは小さく欠伸を漏らして、その身体を横にして眠り始めた。抜刀していた太刀を収め、横腹の具合を確かめる。骨が数本逝った程度で済んだらしい。だがこれを彼女が知れば絶対に心配するであろう。だから、彼は激痛を無視して那智へと近付いた。


「エヴァさん、大丈夫ですか!?」

「問題ない……お前は平気か?」

「はい、僕は平気です」


ニコリ、と笑みを浮かべる那智に表情にこそ出さなかったものの、エヴァライトも安心する。すると、ギルドが大きな荷台を引きながら、こちらに向かってきていた。


*


数時間かけて、孤島から村へと帰ってきた。その間も那智はエヴァライトの事を心配していたが、彼は何もない、と貫いていた。集会場に戻ると、那智の友人であろう人物が出迎えてくれた。


「ありがとうございました、エヴァさん。またよかったら一緒にいってくれますか?」

「……時間があったらな」


那智はペコリと頭を下げて、集会場を友人と一緒に出て行った。


「お疲れ、エヴァ」

「ディーラ……お疲れ様です」


ディーラも集会場に戻っていたらしい。エヴァライトを労いながら、先ほど出て行った少女の事を話題に出す。


「どうだい、彼女は?」

「……まだ甘いです。感傷に浸りやすい」

「そうか。でも私達のギルドに引き込まない理由はないな」

「は!?」


唐突に言い出したディーラに、思わず間抜けな声を漏らす。それに対してディーラは微笑を浮かべながら続けた。


「いいじゃないか。ギルドに人も増える。エヴァも……一々クエストボードを見る必要もなくなる、一石二鳥じゃないか?」

「……ッ!!」


そう、エヴァライトは定期的にクエストボードを見て、彼女がクエストを貼っていないかをチェックしていたのだ。依頼主が記載させているために、誰が貼ったのか分かるのだ。最近、那智が頻繁にクエストボードに貼っているのを、エヴァライトは気にしていた。だから、今回も彼女が依頼したのを受けたのだ。


「知っていたんですか、ディーラ」

「まぁね。それと……横腹、どうしたんだ?」

「ッ!!」


ディーラは鋭い。流石、ギルドマスターといったところか。彼はバツが悪そうな表情を浮かべ素直に言う。


「少し攻撃を喰らった……骨が何本か折れたかと……」

「それは大変だな、すぐに医療班のところに行くぞ」

「いえ、別にこれぐらいは……」

「行くぞ?」


ニコリと有無を言わさぬ威圧感ある笑みに、エヴァライトはただ頷くしかなかった。


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