01月華(げっか)を浴びて刀を交わす

平和を願う、それは平和ではないことを意味する。
本当の平和は、人が願わなくなった瞬間に訪れるのだろう。

その日は雲ひとつなく、満天の星空が広がっていた。そんな空の下で紅茶を飲み、夜空を眺める……そんなロマンティックな、展開もあったかもしれない。
彼女が、軍人でなければ。

現在、交戦中。場所はセントラル街から少し離れた人気のない空き地。

双方の刃は銀色に輝いており、それは暗闇を切り裂くようで。
地面を踏みしめ、相手の行動を見極め反撃の一撃を繰り出す。冷静に、だが迅速に。相手が一瞬だけ隙を見せる。それを見逃すはずもなく彼女は剣舞を繰り出す。

地面を蹴り、横に一閃。防がれたところを弾き返し下から上へ剣を動かす。柄を持ち直してそのまま上から下へと。防がれる、先程より力が弱まっていることに気付いた彼女は剣を逆手に持ち相手の手の甲を柄で叩く。衝撃に相手は剣を手放し、それを拾おうとしゃがむ。彼女は首筋に刃を当て、呟く。


「動くな」


暗闇の中で目立つ赤の髪が風に乗って揺れる。月華に映し出された姿は、相手よりも一回り小さくとても軍人とは思えない細身の身体、とても綺麗な顔立ち……だが、その眼差しは鋭く、悪を犯した獲物は一匹たりとも逃さない、正義の光を宿していた。
そう、彼女が血統軍の大元帥のディーラ。


「窃盗罪、殺人罪……前科二犯。貴様を捕らえる」

「く……そ」


男は彼女を睨みつける。しかし諦めたのか、舌打ちをして両手を上げた。剣をそのまま、通信機を取り出し部下へと連絡。
数分後には、同じ軍服を纏った男性が。


「連れて行け。くれぐれも逃がさないように」

「はっ」


両手を背後で拘束。男が使っていた剣は丁寧に布に包まれ、軍専用の車にそれらを乗せ走り出した。


「大元帥」

「エヴァか」


その場に残されたディーラは背後から聞こえた声に振り向く。


「現場は?」

「あらかた片付きました」

「そうか……私達も帰ろうか。運転は任せたよ」

「はっ」


剣を収めながら、ディーラは歩き出す。その後に、エヴァライトも続いた。


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