一緒にお茶しよう
「遅い!」
緑の着物の青年__蓬餅は煙草を片手に走ってきたハーコットへ一喝する。
彼は白いケースを抱えながら走っていた。
「我を呼び出しておいて待たせるとは……」
「すまねぇ……ちょっとな。うまい店に連れてってやるから勘弁してくれ」
「ほう……気になるの、早く案内するのじゃ」
興味を持った蓬餅に息を整えながら微笑を浮かべる。
腕を引きながら、一つのカフェへと向かう。
偶然なのか、向かい側から白衣を着た女性の姿が見えた。
「お、マラ!」
「ハーコット……と……?」
「あぁ、コイツは蓬餅だ」
「蓬餅さんね、アタシはマラ」
「うむ」
短い自己紹介を済ませ、さっさとカフェへと入る。
決して広いとは言えないものの、ゆったりとできる空間が広がっている。
来客に合わせて一人の女性が姿を見せた。
「あら、いらっしゃい。どうぞ、いつもの席に座って」
「ありがとな」
奥に一つのテーブルが設けられていた。
先ほどの会話から、此処は彼らの専用のテーブルなのだろうと蓬餅は頭の隅で考える。
それぞれ好きな場所に腰を降ろすと、マラが大量の紙をテーブルへと置いた。
「はいこれ」
「お、さんきゅー、相変わらず仕事速いな」
お返しと言わんばかりにハーコットも白いケースからあらゆる資料を取り出す。
「すごい量じゃの……」
「ん?あぁこんなのいつものことだからっと……なんか食うか。蓬餅何食いたい?」
「うむ……しゅーくりーむが食べたい」
「ほいよ。ジェミニー!」
一人の男性の名を呼ぶと、カウンターの方から足音が聞こえた。
ハーコットが彼と話している間に、白衣の男性がもう一人。
彼に気付くとマラは軽く手を振った。
「久しぶり」
「やぁ。おっと……初めまして」
「うむ、初めまして」
「おぉトルテ、いつの間に」
話し終わったのかハーコットが椅子へと腰を下ろしていた。
「コイツは蓬餅。まぁ、仲良くしてやってくれ」
「何だその言い方は」
「おっと……気に障ったらすまねぇ」
「はーいお待たせー」
「ってはや?!」
先ほど見た女性がニコニコと笑みを浮かべながら大量の料理を持ってきていた。
どこにそんな腕力があるのだろうというぐらいにはかなりの量だ。
サンドウィッチからシュークリームからガトーショコラやらなんやら……
これだけの量をあの短時間で作るのは……どうなのだろう。
「ほれ蓬餅、食え。此処のスイーツはまじで美味いんだぜ」
「うむ……では……」
シュークリームを一つ掴んでパクリと一口。
「美味じゃの……」
「だろ?」
ニカッ、と笑みを浮かべる彼に蓬餅は僅かに笑みを浮かべた。
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