「__……?」
視界がぼやけている。
光が眩しい。
腕で光を遮ろうとするが、動かない。
身体全体が動こうとしてくれない。
その前に、ここはどこなのだろう。
クラヴィンはハッキリとしない意識の中、僅かに首を動かした。
自分の家ではない。だが見覚えはあった。
遠くで音がした。
「……あ、起きた?よかった……」
「……ルーン……僕はどのくらい気を失ってた?」
「もう三日かな……」
微笑を浮かべながら、ルーンは手近にあった椅子をベッドの近くまで持っていき、腰を降ろした。
クラヴィンはようやくここがルーンの家だということを把握した。
「……皆は?」
「無事だよ。君のおかげでね」
「僕は、何もしてないよ」
即答するクラヴィンに苦笑を零す。
彼の怪我は酷いものだった。もし、軌銃が早くあそこを出て行かなかったら、当分は目が覚めなかっただろう。
そして、翠螺がいたことも幸いだった。彼女の手早い処置のおかげでもある。
闇市はあれから改装が施され、ショップに変わるとの噂が流れている。
地下に閉じ込められていた人も複数いて、その人達も無事救出された。
これも全てはクラヴィンがルクスに情報を預けたおかげだった。
実はアドルフの屋敷を出たところにいたルクスにひとつのメモを渡していた。
最悪の場合を想定した時に備えてあったもの。
しかし、これが思わぬ形で役に立った。
何となく身体の感覚が戻ってきて、ようやく動かせるようになったクラヴィンは上半身を持ち上げた。
何も着ていないために、腹部に巻かれている包帯を見つけるのは容易だった。肩にも。
「失敗だったよ。僕自身こんなことになるとは思ってなかった」
「ボクだって驚いたよ。ちょっと怪我してるクラヴィンは見たことあったけど、ここまで負傷してるなんて……」
ルーンは彼の身体を見つめながら呟いた。
肩を竦めて、クラヴィンは再びベッドへと身体を預けた。
まだ眩暈がする。
「あ、軌銃から、伝言」
「ん?」
「会ったら一発殴らせろ、だって」
「……彼女らしい」
薄っすらと微笑を浮かべて、瞳を閉じた。
「もう少し、休ませてもらうよ」
「うん。お休み」
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