愛をあげる
※BL/裏注意!
「ん、ぁ……ッあ!」
いつもの頼もしく、鋭い声音ではなく、鼻から抜ける甘ったるい嬌声。眼下にいる愛しい人は、身体が汗ばんでおり、頬は薄っすらと赤く、開いた口の端から零れ落ちた涎が淡い照明の光を反射している。快感に耐える様に閉じられた瞳からは生理的な涙が零れ落ち、それを指の腹を使って拭い取る。
「お、ると……!」
「たいちょ……」
「ひっ……んっ、ああっ……!」
彼、エラルドの中にあった自身をギリギリまで引き抜き、一気に押し込む。すると先程より大きな嬌声が口から漏れ出す。その声音にうっとりしながら、オルトは律動を早めた。ギシギシとベッドが軋み、彼が大きく喘ぐ。隣にいる、特攻部隊の仲間に聞こえてしまうのではないかと思うほどに、エラルドは引っ切り無しにどんな楽器よりも綺麗な、それでいて甘ったるい男とは思えない声を吐き出し続ける。
「、っ……たい、ちょ、」
「ふぁ……あっあ、……!!」
「ぅっ……たいちょ、それ、っ……やばい、ですって……!」
彼の一番感じる場所だけを貫く。ビクリ、ビクリと身体を仰け反らせエラルドは更なる快感を得るために自身へとゆるゆると手を伸ばす。その貪欲な行動にオルトは目を細め達しないように唇を噛み締める。するとエラルドが空いていた手で彼の髪を緩くつかみ、ニヤリと笑い真っ赤に熟れた舌を覗かせ、挑発めいたことをしてきた。その欲望に耐え切れず、オルトは噛み付くように唇を重ねる。舌を絡ませ、咥内を犯していく。
「ふぅ……んっ、あ」
「っ……」
「オルトっ……もっ……」
「イって、いいですよ……たいちょっ……!」
「ッ、あっ……ああ__!!」
背中を仰け反らせ、エラルドの自身から吐き出された白い液体は自分、そしてオルトの腹を汚す。それに合わせて、オルトも快感に顔を歪めながら、自身を引き抜こうとしたのだが__
「ちょ、たいちょ!!手!手離して!」
流石は隊長、と言ったところだろうか、すぐさま上半身を持ち上げ、引き抜こうとしたところを彼の腰、太ももを掴みそれを阻止する。
油断してしまえば中に出してしまいそうなところを、オルトは眉を寄せながら必死に耐える。
「いいよ」
「へ?」
「出せ、俺の中に」
「ちょ、やばっ……ぅぁ……!」
彼の言葉、そして中で締め付けられ、オルトは目を瞑った。
「だめ、だめですって……!」
「いいっつてるだろ」
今日に限ってなんでこんなに積極的なんだ。オルトは唇を噛み締めて彼の手を離させようとするが、思った以上に力が入ってるのと、こちらが上手く力が入っていないこともあって中々離してくれはしなかった。
「強情だな、お前」
「んうっ……__!!」
とどめ、と言わんばかりに深い口付けをいただき、オルトは身体を震わせた。瞬間、彼の中へと欲望を吐き出し罪悪感に苛まれた。
「ふぁ……あ……た、たいちょー……」
「ん、……ぁ、」
エラルドのうっとりとした表情に、内心舌打ちをするオルト。愛おしすぎて、憎めない。惚れた弱み、とでも言うのだろうか。
ズルリ、と今度こそ自身を引き抜けたオルトは怪訝そうに彼を見詰めた。
「ん……」
フル、と身体を震わせエラルドは排出感を感じる。コポ、と彼から白い液体が零れだし思わずオルトは赤面する。
「ッ……」
「くす……どうだった?」
低く笑いながら、エラルドは甘い笑みを浮かべオルトに抱き付く。
酷く官能的で、正直オルトはキャパオーバーだった。何か悪いものでも食べたんじゃないかと思うぐらいには、今日の彼は積極的で、妖艶で。
「よ、よかった、です……」
「ん、よろしい」
ちゅ、と頬に軽いキス。
「ていうか、なんであんなに」
「……少し、苛々してた」
「はぁ!?」
思わぬ回答に、オルトは間抜けな声を上げた。
「誰にですか!?もしかして俺!?」
「新米の奴ら」
「……午後の訓練の時に……なんかありました?」
「……飲み込み悪い、人の話聞かない、いざやってみろって言うとできないと連呼……なんのために、軍に入ったんだって……苛々した」
肩に顔を埋めながら、エラルドは静かに愚痴を吐き出した。オルトは髪を撫でながら、それを聞く。隊長である彼は体術を主に指導している。軍の入隊試験は厳しいものだが、合格してしまえば後は生活は保障されているし、割と恵まれた環境で過ごせる。言ってしまえば、入隊試験さえきちんとやればいい……そう思っている人も少なくはないのだ。
「そうでしたか……」
「……オルト」
「はい?」
「……正直、すまなかった」
いまさら、羞恥心が湧き上がったのだろうか、小さく彼は謝罪する。短く切りそろえられた髪は頬は隠せておらず、かぁと鮮やかに赤くなっていくのが見えた。
それに、小さく笑う。
「いいですよ」
エラルドは一度身体を離して、ゆっくりとオルトに顔を近づける。
「綺麗だな、お前の瞳」
「たいちょーの瞳も、綺麗ですよ……真っ直ぐでかっこよくて」
その言葉に、彼は目を細めた。
「そうか?」
「はい」
オルトは彼の頬に手を添えて、唇を重ねる。ただ、触れるだけのキスを。
「ん、……ふぁ」
唇を離すと、エラルドが小さく欠伸を漏らす。それが移ったのか、オルトも欠伸を噛み殺しつつ、身体を伸ばす。
「うー、ん……風呂入りましょうか」
「……眠い」
「ちょ、寝ないでください!今回ばっかりは……その、中に出しちゃったんで……」
後半につれて、オルトの声量が小さくなる。そしてかぁ、と頬を染めた。
「それも、そうだな……でもねみぃ」
「じゃあ先入っていいですよ」
「ん、さんきゅ」
ギシ、とベッドが軋む。エラルドは身体を伸ばしながら風呂場へと向かう。その際に、彼から零れ落ちた液体がツゥ、と太ももを伝ってるのが見えオルトは再び罪悪感に苛まれる。彼の姿が完全に消えてから、頭を抱え込んだ。
「あーもー……!!」
欲望に勝てなかった自分も悪い。でも一番悪いのは誘ってきた隊長のほうだ。
オルトはゆるゆると立ち上がりデスクに置いてあった眼鏡へと手を伸ばす。それと床に落としたシャツ……どちらかのは分からないがそれを羽織り、再びベッドへと腰を降ろした。シャワーの音がこちらまで聞こえてくる。今頃、あちらもあちらで羞恥心と戦っているのだろうか。
「たいちょーがいけないんですからねー……」
全部、全部は貴方のせい。だから、制御が利かなくなる。
「……でも」
愛しています。
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