because I love you





※現パロ
こへ長♀……嘘、長♀こへです。すいません。
誰がなんと言おうと長次は♀
女装注意
何でも大丈夫な人向け









私は今とても困惑している。

今日は12月25日。昔は「今日はイエス・キリストの誕生日だ。恋人の日じゃねぇ!リア充爆発しろ!」と騒いでいた友人に便乗していた私も、数年前に小平太と付き合いだしてからは、恋人の日として堪能させてもらってるクリスマスだ。
恥ずかしながら、何年目、何回目であろうが楽しみなものは楽しみで、昨日はなかなか寝付けなかったし、プレゼントは11月の頭から物色していて、先週ようやく決めた。品良くラッピングされて部屋の隅の大きい鞄に入れられている、鈍い光沢と黒が掛かった深い赤色の靴は去年贈ったシックなジャケットと良く合うだろう。今迄選んだ品と同様かそれ以上に気に入ってくれたら嬉しい。そして今年はケーキも手作りだ。誰かを思って作るのはやっぱり楽しくて、なかなか寝れなかったのに早起きも全然苦じゃなかったし、デコレーションも予想より豪華なものになった。ブッシュ・ド・ノエルといういたってポピュラーなケーキだが、大手メーカーの大量生産、大量販売の冷凍のものよりはよっぽど美味しいと思う。正確に言えば、美味しいと思ってくれたら嬉しい。
そんな訳で、プレゼントとケーキというクリスマスに必須な最低限は既に揃っていたので、わざわざ人がごった返す外に出ていくこともないだろうから家で二人でゆっくりしようっていう話になって、二人ともその案に乗った。

クリスマス特番でやってた映画を見た後、昼ご飯には一緒にパスタ作った。ちょっと茹ですぎてアルデンテは余裕で越えていたけど、自分で作ったどの料理より美味しく感じた。作ってきたケーキは夜だけで食べるには大きかったから食後に二切れ切り分けた。テーブルに運ぶまでにも、美味しそう、早く食べたいと言いながらくっついてきて、それだけで思わず頬が緩んだが、運ぶときに危うく落としそうになったから、紅茶を運ぶ時には惜しいなと思う心を押さえてひっぺがした。少しむくれて後ろをついてくる様が可愛いかった。紅茶と共に食したケーキは手前味噌ではあるが甘さも程よく美味しかったように思う。小平太が美味しい、美味しいと言ってくれたから余計にそう思うのだろうか。もう一切れいい?とねだる姿が可愛いかったのと、顔をほころばせケーキを頬張る姿が何欲と言えばいいかは分からないけど確実に私を満たしてくれたから、しょうがないな、なんて言っておかわりを差し出した。小平太のこととなると本当に私は私に甘い。


問題はここから。片付けを済ませた後、これやろうよ、と言って持ってきたのは世界一有名な配管工のおじさん達がそれぞれのイメージカラーの車で爆走するゲーム。初めこそ甘い空気に似つかわしい穏やかなレースだったが、お互い勝負事は燃える質で気付いたら馬鹿みたいに本気になってて、17勝17敗で引き分けになったところで、どっちだったかは忘れたが、先に20勝した方が負けた方に言うことを一つ聞いてもらうって賭けを提案して、もう片方も乗った。いや、やっぱり先に提案してきたのは小平太だ。今ならその提案の目的も分かるんだけど、その時は気が付いてなかったし、単に盛り上がる為の一つのイベントかな、くらいにしか思ってなくて、じゃあ本気で迎え撃とうかと、プレイヤーを何でも食べる緑の恐竜から、使い慣れたピンクの攫われ姫に変えた。そして運命の3セットマッチの試合の火蓋は切って落とされた。



結果は私の圧勝。やけに沈んだ小平太に何か一つ命令を出来ることになった。けれど、正直なところ、小平太と一緒に過ごせてるってだけで十二分に満ち足りていたし、やらなきゃいけないこともなかったから、何も思い浮かばなかった。そこで思い出したのが、数日前に小平太の寝室のクローゼットで見つけてしまった赤い生地に白いふわふわの飾りがついているにも関わらず、ふくよかなおじさんが身に付けたら視覚の暴力になりかねない衣装、端的に言えばミニスカサンタ。これだけ前降りがあれば分かるとは思うが、私の口をついて出た命令は、ミニスカサンタを着ること。



「………え?」

「…ミニスカサンタ。あるでしょう?寝室のクローゼットに。」

「え?あ?何で知って?ってか着るの?俺が?」

「…何でって別に隠してなかったじゃない。あ、サイズ大丈夫かな…。」

「えっ、えっ?何?本気なの?」

私は黙った。別に無言の圧力を掛けたかった訳じゃない。ただ純粋に、目を白黒させるってこういうことなんだろうな、とか焦っちゃって可愛いなとかそんな思考に意識をとられてただけ。

「あぁぁぁ!分かった、分かったから!」

何を勘違いしたのかばっと立ち上がり寝室へと駆け込んだ。わあ男前と一瞬思ったが、その先にあるのはミニスカサンタかと冷静に考えるとすぐに払拭された。そして待つこと十数分。サイズがキツかったのか、躊躇しているのか意外と時間が掛かっている。時折、どうしてこんなことに!とか、くそおぉあぁ!とか自業自得ながらも至極最もな叫びが聞こえるから後者なのだと予想する。



「どうだ、長次!!」

そして冒頭に戻るわけだ。
小平太の開き直りを象徴するかのように、盛大な音を立て開かれたドアの傍らに仁王立ちしているのは、最愛の人の居たたまれない姿。自分の命令の所為だとは分かっているが、困惑はしょうがないと思う。頭に乗った絵に描いたようなサンタ帽子は問題ない。だが、白いふわふわが付いた襟から覗く首や鎖骨は雄々しくごつごつしており、二つの質感は明らかにミスマッチ。少し視線を下げると目に入るのは逞しい胸筋、からの腹筋。ボタンが飛ぶんじゃないかと思う程にぴちぴちで、コスプレ特有の薄い生地に浮き出る筋肉が、彼がこの衣装を身につけるには不適当なことを主張している。次に四肢。バレーをやっているためか腕もなかなか破壊的だが、こっちは長袖なのと、タイトな作りではなかったのが救いだ。だが脚はせめてもの救いすらない。女性でもスタイルに自信がないと躊躇うような丈のスカートから伸びるそれは、なんか、もう、凄い。流石スポーツで大学行けただけのことはある。ニーハイもセットだったのか、しっかり着用しているが、不本意だというニーハイの心の声が聞こえてきそうだ。最後に絶対領域。ある意味絶対的な領域ではある。








ふむ。











あり…かも。






確かに美しいとは言えないが、なかなか悪くない。主観だけで言ってしまえばやはり「あり」だ。それどころか、アンバランスさが逆に性的とでも言おうか、何かそそるものすらある。新たな扉を開いた感は拭い去れないけれど。

「…長次。目が据わってんだけど。」

「…気のせい。」

勘だけは良いようだ。小平太の通報すれすれの変態的な姿を視姦して、何故か私の中に沸き上がってきたのはケーキの時とは明らかに違った欲。分かりやすく言ってしまえば

「…凌辱したい。」

あ、言っちゃった。


「は!?どうしたの!?何言ってんの!?嘘だよね?嘘と言って!」

「いや…、嘘ではないけど」

「いやあぁぁぁぁ!長次が変態だあぁぁぁぁ!」

「…よし、やろう。」

「開き直んな。うん、ほんと、まじ勘弁して下さい。」

「聖夜、なのに……!?」

「まだ夜じゃねぇし。ってかそこじゃない。それは寧ろ大歓迎。」

「…じゃあいいじゃない。」

「ねぇ、私に主導権譲る気はないの?せめてこれ脱がせて。お願いします!」

「大丈夫」

「長次…!」

「可愛く喘いでくれればいいから…!」

「それ大丈夫じゃな!え、まじで?え、ちょっ。い"ぎゃぁぁぁ!」





because I love you
(変態だなんて心外。貴方だからいいのに)


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


欲望を詰め込みすぎた。



その後

「…ねえ、小平太」

「ん?何?」

「…ナース。好きだったよね?」

「見るのがだからね!?」


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