二人ぼっちの鬼遊び



※3000打企画作品
 年齢操作
 二人が敵同士








昔話をしようか。
私達が黒を着るより前の。

私達は比較的平和な囲われた世界の中に確かにいた。思慮深くしっかり者の長次と後先考えずただひたすらに突っ走る私。全く真逆の二人だったが周りの心配をよそに不思議と相性が良かった。何をするにも一緒の唯一無二の友。そのうちどちらともなくその一線を越え、互いに欠くことの出来ない一部になった。三禁なんて言葉も知っていたし、よく言われもしたけど、まだ厳しく残酷な外の世界に敏感になりきれていなかったからか、実感は薄くて、暖かく心地よい関係を手放すには至らなかった。守るものがある方が強くなれるなんて忍には御法度な綺麗事すら信じていた。卒業と同時に失うまでは。
馬鹿だったなと思う。馬鹿で、幼い。来もしない未来を信じて、それがどれほど愚かなことかも知らずに。しかし結局のところ、一番幸せだったのもあの頃なのだ。全て切り捨てて、忍としては随分立派になった今よりも。

「…それは、……この状況で話すことなのか…」
「この状況って?」
「…私達が今回の戦において敵同士ということじゃないか?」
「だよな。」
「……。」

確かに私達は敵で、ついさっきまで戦してたけどさ。せっかく再開出来たんだ。本陣が落ちて決着がついた今、親友、もとい元恋人っていう関係を優先させたっていいだろう。主に忠誠を違う武士でもあるまいし。所詮私達は雇われ忍なんだ。
そんな私の都合の良い考えを見透かしてか、長次は少し眉間を寄せた苦い表情を寄越してくる。しかし冷静沈着で忍の鏡のような長次だって所詮は人の子だ。懐かしの思い出話に心惹かれる気持ちがない訳ではないのだろう。腰を上げ、ここから去ろうとしないのがその証拠だ。口では理性を語ろうと、ちゃんと私のとこまで堕ちてくれるそういうところがたまらなく愛おしい。

「なあ」
「……なんだ」
「久々にさ…、恋人ごっこしてみないか?」
「……は?」

あれ?何言ってんだろ私。思ってもみなかった言葉が口をついた。長次も避ける素振りを見せなかったし何となく懐かしくなっちゃったのは確かだけど、何も再び報われないおままごとに乗り出すつもりはない。どうしようも無くなり、取り敢えず視線だけをずらして長次の顔色を窺う。眉間に深く皺を寄せただ純粋な不可解だけを伝えてきた。長次も好意的だったら意外とありじゃないか?という調子に乗った思考は光の速さで消去した。

「なーんて冗談。」

流石に居たたまれなくなって笑顔で茶化す。大丈夫、ちゃんと冗談に聞こえたはずだ、ってか半分、もしくはそれ以上に冗談だったし。……そうか。と呟く長次の声が明らかに訝しむ風だったから、当たり前だろー、と念押しして、逃げるように空を仰ぐ。すると乾の方角に狼煙が上がるのが見えた。

「なんだあれ。」

指をさして注意を促す。長次はそれを確認するなりおもむろに黙ったまま立ち上がり懐から縄標を取り出し慣れた手つきで弄ぶ。あの頃より更に切れがましたように見えるその動作は、実習に行くたびに目にした彼の癖そのもので、言葉にするよりずっと鮮やかに過去が思い出されて何故か無性に寂しくなった。やや遅れて、どうした?なんて訪ようとすると、それを遮るように長次の口が静かに、すまんなと動いた。

「……小平太の……暗殺を命じらた。」

…小平太は強いから。そう言う長次の表情は逆光で読めない。だけどこちらを見下ろす目はぎらつきを孕んだ忍特有のもので、今までに向けられたことのない痛い程の殺気にぞくりとした。意外。嫌いじゃないな、この感覚。そもそも長次から与えられるものに嫌悪なんて覚えるはずないか。思考を巡らせるなんて不慣れなことをしながらも、戦いに慣れた私の目が長次の利き手に力が一層こもったのを捕えた。その時私達の上に影が落ちてきた。それは随分と立派な体躯の一羽の鷹。そして、明らかに野生ではないと分かる規則的な旋回を数回繰り返した後、高い鳴き声を発した。分かる者には分かる。これは、何かの、合図。そして私は立ち上がる。

「長次。謝ることないよ。」

長次のただでさえきつい目付きがさらに鋭くなる。こっちを探るようなことしなくても気付いてるくせに。

「私も同じだ」

長次は頭いいんだからさ。



にしても皮肉なもんだ。愛し合った二人の懐かしの再会は偶然なんかじゃなくて、互いが仕組んだ必然だった訳だ。突き抜けるように広がる空は二人で純粋に笑い合えたあの頃と同じに綺麗なのに、どうして私達はこうなったのか。そう嘆くと同時に、幸せな思い出の最後が殺し合いなんてとっても劇的でいいかも、なんて思ってしまうのだからつくづく忍ってのはしょうがない。


互いが深く息を吸ったのを合図に、目に鋭さが宿り武器を握った腕がしなる。ちりちりと肌が焼け付くような空気の中、鋭い金属音が響いた。





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

まくも様へ


お待たせしました!あ、待ってませんでしたか(。_。)


先に言います。すいません。
全くリクエストに沿えてません。
分かってます。言い訳はしません。ただ一つ言わせてください。書き直し全然します。

拙い文章ですが、もらって頂けたら幸いです。

リクエストありがとうございました!


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