こちら、リア充撲滅委員会です。







それはある晴れた日のこと。
俺様は旦那のせいで無惨なことになった愛用のエプロンの代わりを探しに1人でショッピングモールに出かけた。エスカレーターで目的の階までたどり着いたところでちらっと目の端に映ったのはよく見知った金色と赤色。


「かすがと…小太郎…だと!」


え、思わず隠れちゃったんだけど。何あれ。何あれ!仲睦まじくない?俺様はぶいて二人でお出かけとか、どう考えてもデーt…いやああぁぁ!めっちゃ楽しそうじゃん!1人で来た俺様超惨めじゃん!ちょ、二人で色違いの小物とか見てんじゃねーよおおぉぉ!この無口野郎!泥棒鴉!俺様がずっとかすがにアプローチしてたの知ってんじゃんか!おい!迷彩手にとってんじゃねえよ!当て付けか!うわ、やば、こっちくる!無理無理無理、いまあいつらに会ったら俺様泣いちゃうわ。うっわ…正面から見たくなかった……。あいつら高身長、美男美女のただのお似合いカプじゃねえかああぁぁぁ!

空は眩しい程晴れわたっており、まさにランニング日和と言うに相応しい。その中を俺様はどしゃ降りの如く重い心を抱え走り去った。





「旦那ああぁぁぁ!聞いてええぇぇ!」

「お、佐助!おかえりでござる」

「実はかくかくしかじかで」

さっきの悲しいことこの上ない出来事を簡潔に説明する。二次元って便利!

「ふむふむ」

「酷いと思わない!?」

「ちょっと何言ってるか分からないでこざる」

「旦那冷たい!」

もういいよ!どうせ俺様なんて一生ぼっちの苦労人なんだ!前田の旦那とお揃い…じゃねえや。あの人雑賀さんとかいう美女手に入れたんだった。くっそ!超アウェイ!家も学校も超アウェイ!ケーキ、ケーキ食べたい。ストレスには甘いものだよね。これはホールでいっても良い気がする。よし、


「苺買ってこよう。」


卵片手割りが綺麗にきまっても、がしゃがしゃ生クリームを泡立てても気分は晴れなかった。苺の飾り切りが予想以上に上手くできたことに一瞬気が緩んだが、やっぱり晴れなかった。ケーキはいくら甘党の俺様でもホールは無理で、っていうか1人で虚しく食べる気にもならなくて、旦那に一切れ切り分けた後、冷蔵庫にしまった。明日二人にも持っていってあげよ、なんていつも通りの考えに至ったらさっきの光景が甦ってきてまた泣けてきて、でも結局、祝杯代わりに持ってくか、俺様も吹っ切りたいし、となんやかんやで持ってくことに決めた俺様超優しい。だから惨めとか言うな!







あー、超憂鬱。学校行きたくねー。行くけどさー。もう着くけどさー。まじでどんな顔して会やいいのよ。見せつけられたら絶対顔引きつる自信あるわ。


「おはよー、うわっ!」


とっても重いドアを開けると、弾けるような音と共に飛んできたのは色とりどりのカラーテープ。その発生元であろうクラッカーを持っているお友達、つまりかすがと小太郎はクールビューティーを地でいく二人には珍しく笑顔だ。えーっと、なんだかよく分からないが何故に二人?俺様は?なんで俺様だけはぶいたの?……つまりはあれか、二人の世界に俺様はいらないと…。


「リア充爆発しろおおぉぉ!」

「は?何を言っているんだ」

「末永く爆発しろおおぉぉ!」


ああもうやだ!なんで朝からこんな仕打ち!?悔しさとか寂しさとか羨ましさとかで手元のケータイがミシミシと悲鳴を上げる。バレンタインの女子には負けるけど、ちゃんとラッピングまでしてきたケーキを投げ付けたい衝動に駆られたが、材料費と掛かった時間を考えたら貧乏性の俺様にはそんなこと出来なくて結局崩れないよう丁寧に取り出す。


「はい!これどうぞ!お幸せに!」

「は?さっきからなんなんだ。何でお前から受け取らなきゃならんのだ」


ひ、酷い!俺様の作ったもんなんて口に出来ないってことですか!?


「はい」

「え?」


俺様がネガティブ回路でぐるぐるしていると目の前に差し出されたのは品良くラッピングされた紙袋。


「くれんの?俺様に?」

「ああ」


ちらっと小太郎の方を見ると首を縦にこくこくと振っている。どうやら本当に俺様にくれるみたいなので、ラッピングを破いてしまわないよう丁寧に封を開ける。そこには迷彩のエプロンと手のひらサイズのカード。


「はっぴー…ばーすでい?……あ。」


そうだわ。全く覚えてなかったけど、今日俺様誕生日じゃん。うっわまじかよ、超嬉し…


「お、おい!なんで泣くんだ!気に喰わなかったのか?」


この前エプロン欲しいとか言ってたよな、とか言ってうろたえるかすがかわいー、ついでに小太郎も、なんてよこしまな考えはなかったことにして、全力で頭を左右に振る。いや、だってまじ嬉しいし。もーほんとこいつら良い奴。勘違いで嫉妬してた俺様超カッコ悪いし、とってもおばかさんだ。どうやら俺様の涙は嬉し泣きってことが分かったようで、さすがにそこまで喜ばれるとは思ってなかったのか、二人ともどこか照れた表情を浮かべる。だからそーゆーところが可愛いんですって。


「ま、まあ、とにかく。誕生日おめでとう。これからもよろしくな」

「へへっ、ありがと。こちらこそよろしく!」




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佐助の誕生日っていつよ


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