幸福論





八左ヱ門と特別な関係を結んでそろそろ二年。
そんなある日の実習帰り、俺は唐突にその関係の終わりを告げた。
やけに冷たい声が出て少し驚いた。

八左ヱ門の表情は一瞬で困惑の色を帯び、俺の胸に鋭い痛みを与えた。

こんなの言い訳じみてるかもしれないけど、決して俺の気持ちが褪せた訳じゃない。
相変わらず大切に思ってる。
むしろ当初よりその気持ちは大きいくらいで。

ただ、向いてないんだよ。
俺達がこれから生きていこうとする世界でこの関係を護っていくには、八左ヱ門はあまりにも優し過ぎる。

今は仲間と謳う誰かがいつか敵になるなんていくらでもある話で、それが俺達の未来だとしても、八左ヱ門は決して俺に手を振り上げようとはしてくれないだろう、っていうのは自惚れじゃないと思うんだ。

いつか俺達が殺しあうその時に君が躊躇しなくていいように。

誰より優しい君が死ななきゃいけない世界でないように。

優しい君が馬鹿をみる世界でないように。



「それでも俺はお前といたい。」


ずるいと思う。
俺がどれだけ高尚な理屈を並べようと君の眩しさはいとも簡単に俺の決意を揺らがせる。





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浅霧 遥様、『放送コード』への相互記念


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